「日本語が母国語レベルではない。Japanese Bが学校にないので、Japanese A SL か Spanish ab initio のどちらかを選ばないといけない。English A SL、Math AA HL、Chem HL、Bio HL と合わせると、言語選択で失敗したらIB全体が崩れてしまう」
こうした悩みを持つ生徒は、インターナショナルスクールや一部のバイリンガル校で少なくありません。この記事では、IB公式の科目構造と評価基準に基づいて、Japanese A SL と Spanish ab initio の違い・適性・選択基準を整理します。
目次
- IB Group 2の3階層:A/B/ab initio
- Japanese A SLとは何か:非母語話者が取る場合の現実
- Spanish ab initioとは何か:到達レベルと構造
- 3つの判断軸:現在の日本語力・ワークロード・進路
- HL3科目+English A SL の生徒へのおすすめ
- Japanese A SLを選ぶ場合の対策戦略
- Spanish ab initioを選ぶ場合の対策戦略
- Bilingual Diplomaを狙うかどうか
- IBの勉強でお悩みですか?
IB Group 2の3階層:A/B/ab initio
IB DPのGroup 2(言語科目)には3つの到達レベルがあります。
Language A
- その言語を母語(第一言語)として扱う科目
- 文学分析・テクスト分析が中心
- SL・HLあり
- Language Aは通常Group 1でも履修可能(Bilingual Diploma)
Language B
- その言語を第二言語として学ぶ科目
- 既にある程度の基礎がある前提
- SL・HLあり
- 日本でよく選ばれるのはEnglish B
Language ab initio
- その言語を初級から学ぶ科目
- 前提知識ゼロを想定
- SLのみ(HLはない)
- Spanish、French、Mandarinなどが提供されることが多い
Japanese A SLとは何か:非母語話者が取る場合の現実
Japanese A SLは「日本語を第一言語として扱う」前提の科目です。評価は文学分析と非文学テクスト分析で構成されます。
Paper 1(1時間15分、35%):初見の非文学テクスト分析
Paper 2(1時間45分、35%):2作品の比較エッセイ
Individual Oral(30%):作品と非文学テクストの分析口頭試験
HL Essay(HLのみ、20%):自選テーマでの学術エッセイ1,200〜1,500語
非母語話者が取る場合の難所
- Paper 1は初見のテクストを分析する試験のため、語彙力が採点に直結する。日常会話はできても、学術文章・広告・評論の専門語彙に苦しむケースが多い
- Paper 2は事前に用意できる比較エッセイだが、作品を日本語で読み切る必要がある。学習用の課題文学(現代小説、詩、戯曲)は、ネイティブでも読解に時間がかかる
- 評価基準のCriterion D(言語)では、敬語・文法・語彙の正確さが直接採点対象。第二言語として学んできた生徒はここで失点しやすい
ただし、チャット上級生の経験談でも「IAは用意できるので行ける」「paper 2は自分なりの型を用意して、事前に語彙などを高めておくことは可能」と報告されており、準備次第では高得点も狙える科目です。
Spanish ab initioとは何か:到達レベルと構造
Spanish ab initioは初級から2年かけて基礎を築く科目です。到達レベルはCEFR A2相当(欧州言語共通参照枠)とされ、以下の場面で対応できる力を目指します。
- 自己紹介・家族・学校生活・趣味などの身近な話題の会話
- 簡単な観光・買い物・移動のコミュニケーション
- 短い文章の読解と要約
- 指定テーマでの短作文(約100〜150字)
評価構造
- Paper 1:Writing(1時間、25%)
- Paper 2:Receptive skills – Listening + Reading(1時間45分、50%)
- Individual Oral(25%)
Spanish ab initioの利点(日本語話者視点)
- スペイン語はローマ字表記で、日本人にとって発音がしやすい(日本語のカタカナ音素と近い)
- 文法はEnglish・Frenchより論理的で、活用規則が一貫している
- 2年間で初級から積み上げるため、学習計画が立てやすい
- 教材・参考書・オンライン教材が豊富
3つの判断軸:現在の日本語力・ワークロード・進路
軸1:現在の日本語力
- 日常会話は流暢+学術文書も読める+自分で書ける:Japanese A SLで勝負できる
- 日常会話はできるが学術文書は辞書必須、作文は苦手:Spanish ab initioの方が負担が少ない
- 日常会話は片言、読み書きも未完成:Japanese A SLは厳しい。Spanish ab initioが現実的
軸2:IB全体のワークロード
あなたが理系HL3科目(Math AA HL、Chem HL、Bio HL)を取る場合、理系コンテンツだけで学習時間の60〜70%を消費します。残り30〜40%で言語2科目とGroup 3・TOK・CAS・EEをこなすことになります。
この状況ではGroup 2は「最小のコストで確実に5〜6点取れる科目」が理想。Japanese A SLで4点に落ちるリスクより、Spanish ab initioで安定して5〜6点を取る戦略の方が、合計点の伸びしろが大きいことが多いです。
軸3:進路(出願大学の要件)
- 日本の国立大学IB入試:Language Aが2つ(Bilingual Diploma)あると有利なケースがある。ただし必須要件ではない大学がほとんど
- 海外大学(英語圏):Language Aが1つあれば十分。Spanish ab initioでもLanguage B SLでも言語要件を満たす
- 日本の医学部:言語科目の要件は学校ごとに異なるため、志望校の要項を確認
「医学部・経済学部志望」のような進路の場合、理系HL3科目と English A SL の完成度の方が、Group 2でLanguage Aを2つ取るかどうかより重要です。
HL3科目+English A SL の生徒へのおすすめ
結論的には、以下の条件に該当する生徒はSpanish ab initioの方が安全です。
- 日本語の読み書きが学術レベルで完成していない
- 理系HL3科目を取る(Math AA HL、Chem HL、Bio HLなど)
- 将来の志望大学がLanguage A 2つを必須としない
Spanish ab initioはab initio(ゼロから)という前提で評価されるため、2年間コツコツ取り組めば5〜6点は現実的です。Japanese A SLでCriterion D(言語)で失点するリスクを回避しつつ、全体の合計点を安定させられます。
逆にJapanese A SLをおすすめするケース
- 小学校〜中学校まで日本の学校で学んだ経験がある
- 日常会話だけでなく、新聞・小説・評論を独力で読める
- 将来、日本の大学で日本語で学ぶ予定(国際教養大学、ICU、上智大学など)
Japanese A SLを選ぶ場合の対策戦略
早期から語彙と漢字の基礎を固める
Paper 1は初見テクスト分析のため、語彙力が点数に直結します。漢検2級レベル(約3,000字)の漢字と、評論・広告・新聞で頻出する専門語彙を体系的に学習します。
Paper 2は型で勝負
事前に用意できるPaper 2は、2〜3個の比較エッセイの型を作り込んで暗記します。設問タイプ別の型作りは以下の記事を参照してください。
IO(Individual Oral)は準備で差がつく
口頭試験は40%の配点を持つ最大コンポーネント。非母語話者は発話の流暢さで苦戦しがちですが、事前にグローバルイシューと作品・非文学テクストの結びつきを入念に準備すれば、ネイティブと同等の評価を取れます。
Spanish ab initioを選ぶ場合の対策戦略
毎日15〜30分の継続学習
初級から始める言語は、週1回まとめてより毎日少しずつの方が定着します。アプリ(Duolingo、Babbel、Busuu)+単語カード(Anki)の組み合わせが効率的。
Paper 2(Receptive skills)対策に早めに着手
Listening + Reading で50%を占める最重要コンポーネント。DP1後半からスペイン語のYouTube(教育系チャンネル)、NHK Worldスペイン語版、スペイン語ニュースのヘッドラインを日常的に接種します。
Individual Oralは視覚刺激への反応力
ab initioの口頭試験は写真や絵を見て描写する形式。DP2前半までに「describir(描写する)」の定型表現を50〜100パターン覚えれば、本番で詰まらずに話せます。
Bilingual Diplomaを狙うかどうか
IBではLanguage Aを2つ取ることでBilingual Diplomaが取得可能です。例えばEnglish A SL と Japanese A SLの両方を取れば、ディプロマ証書に「Bilingual」の記載が付きます。
Bilingual Diplomaのメリット
- 一部の海外大学(特にスペイン語圏・フランス語圏の大学)で加点要素になる
- 履歴書でのアピール材料になる
- 日本の大学入試でも、多言語要件を持つ大学で評価される
Bilingual Diplomaのデメリット
- Language A 2科目分のワークロード(文学作品読解・分析エッセイ)が重い
- 理系HL3科目との並行は現実的に厳しい
- Bilingual Diplomaを要件とする大学は実は少数派
結論
志望大学がBilingual Diplomaを必須要件としていなければ、Japanese A SLを無理に取る必要はありません。Spanish ab initioで安定得点を確保し、理系HL科目と英語科目で勝負する方が、多くの進路で現実的な選択です。
IBの勉強でお悩みですか?
IBTは、IB卒業生だけで構成されたIB専門の家庭教師サービスです。Group 2の科目選択相談、Japanese A・Language Bの添削、Math・Sciences HLの指導まで、IB経験者の現役大学生・卒業生講師がマンツーマンで対応します。まずは60分の無料体験からどうぞ。
関連記事
出典
- International Baccalaureate Organization (IBO)「Language Acquisition」公式サイト:https://ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/language-acquisition/
- IBO「Language A: Language and Literature course」
- Tychr「IB Group 2: Language Acquisition ab initio SL vs B SL vs B HL」
- RevisionDojo「Complete Guide to IB Spanish ab initio: Course Details, Assessment Tips and FAQs」
- IB Group 2 subjects - Wikipedia