「IB Computer Scienceが新シラバスに変わると聞いたけど、何が変わったの?」「2027年5月のFirst Assessmentに向けて、何を準備すればいい?」

IB DP Computer Science(CS)は、IBOによって2025年2月に新シラバスが発表され、2025年8月のFirst Teaching、2027年5月のFirst Assessmentで完全に新カリキュラムに移行します。Pseudocodeの廃止、機械学習・SQL・OOPの導入、Paper 3の廃止など、影響範囲の大きい改訂です。

この記事では、IBO公式CS Subject Guide(First Assessment 2027)に基づき、変更点・新シラバスの構造・評価方法・HL/SLの違いを整理します。

目次

新シラバスの概要

IBO公式情報によれば、新DP Computer Scienceは次のスケジュールで導入されます。

  • 新シラバス発表:2025年2月
  • First Teaching:2025年8月(北半球)/2026年1月(南半球)
  • First Assessment:May 2027(北半球)/November 2026(南半球)
  • Last Assessment(旧シラバス):May 2026(北半球)/November 2025(南半球)

つまり、現在のYear 11/MYP5の生徒が2027年5月にDP CS試験を受ける場合、新シラバスに完全対応した準備が必要です。

大きな変更点5つ

新シラバスにおける主要な変更点は次の5つです。

1. Pseudocodeの廃止 → Java または Python の選択制 旧シラバスではPseudocode(IB独自の擬似言語)を使っていましたが、新シラバスではJavaまたはPythonの二択になりました。学校が言語を選び、その言語でPaper・IAともに記述します。

2. Optionsの廃止 → Paper 3の削除 旧シラバスにあった4つのOptions(Databases、Modelling and simulation、Web science、Object-oriented programming)が廃止され、コアシラバスに重要要素が統合されました。これに伴い、Optionsを評価していたPaper 3が削除されました。

3. 機械学習(Machine Learning)の導入 新シラバスでは、機械学習がコア内容に組み込まれました。教師あり/教師なし学習の概念、モデルの訓練と評価、倫理的な配慮(バイアス、プライバシー、公平性)が扱われます。

4. SQLとデータベースのコア化 旧Optionsにあったデータベースが全生徒の必修内容になりました。SQLによるクエリ作成、リレーショナルデータベース設計、データ整合性などを学びます。

5. オブジェクト指向プログラミング(OOP)のコア化 クラス、オブジェクト、継承、ポリモーフィズム、カプセル化などのOOP概念が、SL・HL両方の必修内容になりました。

これらの変更は、現代のソフトウェアエンジニアリング・データサイエンスの基礎を、より直接的にIB CSに反映させる狙いがあります。

新シラバスの2大Theme:A・B

旧シラバスの7つのトピック構成から、新シラバスでは2つの大きなThemeに再編されました。

Theme A:How computing systems work コンピューターシステムの内部構造、ハードウェア、OS、ネットワーク、データの表現、コンピューターアーキテクチャなど。Paper 1で評価されます。

Theme B:Solving problems using computing アルゴリズム的思考、プログラミング、データ構造、機械学習、データベース、OOPなど。Paper 2で評価されます。

このシンプルな2分割により、内容の論理的な接続が分かりやすくなりました。

Paper構成(Paper 1・Paper 2・Case Study)

新シラバスのPaper構成は次の通りです。

Paper 1(SL/HL共通の構造) Theme Aの内容+Case Studyを扱う試験です。Case Studyは事前に公開され、試験当日にそれに関する設問が出題される形式。HLはより複雑で深い設問が課されます。

Paper 2(SL/HL共通の構造) Theme Bの内容、つまりアルゴリズム・プログラミング・データ処理を扱う試験です。実際のコード読解・記述問題が含まれます。

旧シラバスにあったPaper 3(Options用)は削除されました。

なお、HL生徒は追加でB.4:abstract data types(スタック、キュー、リンクトリスト、二分木、再帰)を学習し、より深い問題に取り組みます。

Internal Assessment(IA)の変更

新シラバスのIAは大きく変更されました。

  • 時間配分:35時間(旧30時間から増加)
  • 配点比率:SLは最終評価の30%、HLは20%
  • クライアント要件の廃止:旧シラバスでは「実在のクライアントに向けた解決策」が必須でしたが、新シラバスではクライアントなしでも実施可能。生徒が興味を持つトピックを自由に探究できるようになりました。
  • 柔軟な題材:プログラム開発、データ分析、機械学習モデル構築、データベース設計など、幅広いタイプのプロジェクトが認められます。

クライアント要件の廃止は、生徒の主体性を高める一方で、「自分でテーマを定義する力」がより求められるようになりました。

HLとSLの違い

新シラバスにおけるHL/SLの主な違いは次の通りです。

  • HL専用内容:B.4 abstract data types(スタック、キュー、リンクトリスト、二分木、再帰)
  • Case Studyの深さ:HLはCase Studyに関するより複雑な分析・評価が求められる
  • IAの配点比率:SLは30%、HLは20%(HLの方がIAの相対重要度は低い)
  • 指導時間:SL150時間、HL240時間が標準

HLはアルゴリズムとデータ構造、再帰など、コンピューターサイエンスの「中核的な思考」をより深く学ぶ設計です。STEM系大学進学を視野に入れる生徒には特に推奨されます。

新シラバスへの実践的な準備

新シラバスに対応するための実践的な準備のポイントです。

  • 学校の選択言語を確認:JavaとPythonの選択は学校が行います。自分が学ぶ言語を早めに把握し、教科書・教材を揃えます。
  • JavaまたはPythonで日常的にコーディング:Codecademy、freeCodeCamp、AtCoder、Project Eulerなどでアルゴリズム練習を継続します。
  • 機械学習の基礎を独学:scikit-learn、TensorFlow、KaggleなどでハンズオンができるとIA・Paper 2で大きな武器になります。
  • SQLをデータベース実機で練習:SQLite、PostgreSQLなどで実際にクエリを書く経験が、Paper 2でのデータベース設問に直結します。
  • OOPを実際のプロジェクトで使う:単なる文法ではなく、クラス設計の考え方を実装プロジェクトで身につけます。

新シラバスの教材・過去問はまだ蓄積が少ないため、IBO発行のSpecimen Papers(見本問題)と、各教育リソース企業(Kognity、ManageBac、Revision Villageなど)の対応教材を活用します。

Computer Scienceを選ぶべき生徒像

IB CSが特に向いているのは次のタイプの生徒です。

  • 論理的思考と数学が好き:アルゴリズム設計には数学的思考が直結します。
  • 手を動かして作るのが好き:抽象的な理論よりも、実装してみるプロセスを楽しめる。
  • 将来IT・データサイエンス・AI領域に興味:機械学習・SQLが必修になったことで、進学後の専門課程にスムーズに接続できます。
  • EEのテーマも自分で設計したい:CSのEEは特に主体性が問われます。

逆に「コーディング未経験で、論理よりも記述・暗記が得意」なタイプには、初年度の負担が重く感じられる場合があります。事前にPython/Javaの基礎を独学で触っておくと、DP1のスタートが楽になります。

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