「事前に、どんな設問にも繋げられそうな比較論文のアウトラインを頭に入れていく。でも先生には、それだと少しリスキーと言われている」

IB日本語A 言語と文学 Paper 2の対策で、こう悩んでいる生徒は非常に多いです。結論から言うと、型は作るべき。ただし1つではなく複数パターンで、かつ2026年5月からの新採点基準を踏まえた型にする必要があります

この記事では、IB公式の最新評価基準(First assessment May 2026)に基づいて、Paper 2で高得点を狙える「型」の作り方を解説します。

目次

Paper 2の基本構造(2026年5月〜の新仕様)

IB日本語A 言語と文学のPaper 2は、2026年5月セッションから新採点基準が適用されます。これはIBが2024年9月のFirst teachingに合わせて発表した改訂で、日本語Aを含む全Language A科目に共通する変更です。

SL・HL共通の仕様

  • 試験時間:1時間45分
  • 設問数:4問から1問を選択(HLの場合)
  • 2つの学習済み文学作品を比較するエッセイを書く
  • 最終評価全体に占める割合:HLは25%、SLは35%

2026年5月からの主な変更点

  • 総得点:30点 → 25点
  • Criterion A(知識と理解):10点 → 5点
  • Criterion B:「分析と評価」が B1(テクスト内分析)と B2(比較分析)に分離、それぞれ5点
  • Criterion C(焦点・構成・展開)・Criterion D(言語):変更なし、各5点のまま

つまり、新基準では A: 5 + B1: 5 + B2: 5 + C: 5 + D: 5 = 合計25点。比較の観点が独立した評価項目として切り出された点が最大の改訂ポイントです。

なぜ「型」は必要か

Paper 2は1時間45分で、2作品を比較するエッセイを一から組み立てる試験です。本番で設問を読んでから比較の論点を0から探していたら、書き始める前に時間切れになります。

型(事前に用意した論の骨格)があれば、次の3点を本番で節約できます。

  • 比較の軸(テーマ・技法・構造のどれで比較するか)を考える時間
  • 引用候補をどの場面から取るかを思い出す時間
  • 段落構成をどう組むかを決める時間

Criterion C(焦点・構成・展開)とCriterion D(言語)は、事前準備でほぼ到達点が決まると言っていい項目です。型があればC・Dは安定します。

なぜ先生は「型はリスキー」と言うのか

先生が警告するのは、1つの型だけを暗記して、どんな設問にも無理やり当てはめる書き方です。この書き方には3つの落とし穴があります。

落とし穴1:設問の要求に答えていない

Paper 2の設問は「作家の選択がどう意味を形成するか」「対立する価値観がどう描かれているか」のように、問いの軸が毎回違います。型を先に決めていると、設問の軸を無視して自分の用意した比較軸を書いてしまい、Criterion A(知識と理解)で「設問に答えていない」と減点されます。

落とし穴2:新Criterion B2「比較分析」で浅くなる

暗記した比較軸をそのまま書くと、2作品を「別々に説明してから最後にまとめる」構造になりがちです。これは新Criterion B2が最も嫌う書き方。B2は「設問を軸に、2作品の技法・意味・効果を相互に往復する」ことを求めています。

落とし穴3:Criterion B1「テクスト内分析」の引用が浅い

型に合わせて引用を選ぶと、設問の軸に合わない引用を無理に使うことになります。結果、引用と論点がズレてB1で減点。

つまり先生の「リスキー」は 「1つの型を機械的に当てはめると、A・B1・B2の3つで同時に減点されるよ」 という警告なのです。

複数テンプレ戦略:2〜3個の型を用意する

解決策は、1つの完成したエッセイを暗記するのではなく、設問タイプ別に2〜3個の型を用意することです。

型1:主題・テーマ軸での比較

設問例:「2作品が描く『自由』の意味を比較しなさい」「対立する価値観がどう描かれているか比較しなさい」 主題・テーマを軸に、各作品でそれがどう描かれているかどんな技法で表現されているか読者にどう作用するかを比較する型。

型2:技法・構造軸での比較

設問例:「2作品の語り手の選択がテクストの意味にどう影響するか比較しなさい」「時間構造の違いを比較しなさい」 語り手・視点・時間構造・象徴といった技法を軸に、各作品での使い方の違いと共通点を往復させる型。

型3:文脈・読者反応軸での比較

設問例:「2作品が書かれた文脈が解釈にどう影響するか比較しなさい」「読者の立場によって解釈がどう変わるか比較しなさい」 執筆時代・読者の文化的背景・現代的な読み方を軸に、各作品が文脈とどう関わっているかを比較する型。

この3つを事前に用意しておけば、設問4問のうち少なくとも1問は自分の得意な軸で書けます。2025年11月セッション以降、設問は**「and/or」の柔軟性**が採点基準に明記されたため、類似点・相違点のどちらかに寄せても減点されません。

型の中身:比較エッセイの7段落構成テンプレート

どの軸を選んでも使える汎用の7段落構成を示します。

段落1:導入(約150〜200字)

  • 2作品のタイトル・作者・ジャンルを明示
  • 設問を自分の言葉で言い換え(設問の軸を特定)
  • 論題(この比較で何を主張するか)を1文で提示

段落2:論点1・作品A(約250〜300字)

  • 作品Aで設問の軸がどう現れているか
  • 具体的な場面・引用
  • 作者の選択と技法の効果

段落3:論点1・作品B(約250〜300字)

  • 作品Bで同じ軸がどう現れているか
  • 具体的な場面・引用
  • 作品Aとの接続を1文入れる(ここがB2で評価される

段落4:論点2・作品Aと作品Bの比較(約300字)

  • 別の切り口で両作品を並置
  • 共通点と相違点の両方を扱う
  • 技法の違いが生み出す意味の違いを言語化

段落5:論点3・文脈や読者の位置(約250〜300字)

  • 文脈・読者反応・現代的解釈などで一段階広げる
  • 設問の軸と結びつける

段落6:反論への応答(任意・約150字)

  • 「この比較にはこういう異論もありうるが〜」と対抗解釈を先回りする
  • HL受験者は特に加点されやすい

段落7:結論(約150〜200字)

  • 論題を再確認
  • 比較を通して見えた作家の選択の意味を一段階抽象化
  • 設問に明確に答える1文で閉じる

合計1500〜1700字程度。日本語Aの場合、この程度の分量が時間内に書ける現実的なボリュームです。

新Criterion B2「比較分析」で落とさない書き方

2026年5月からの新採点基準で最も配点を失いやすいのが、新設された Criterion B2(比較分析) です。B2で高得点を取るための具体ルールは3つ。

ルール1:段落の途中で作品Aから作品Bへ橋渡しする

「一方で」「これに対して」「〜と同様に」「〜とは異なり」のような比較接続詞を段落内で使い、2作品を意識的に往復させます。作品AとBを別段落でまとめて書いて、最後に比較段落を置く構造は、B2では評価されません。

ルール2:設問の軸で比較する

比較の軸を設問から取ること。自分の用意した軸をそのまま使うのではなく、設問の語彙を論題に取り込むのが最も簡単な対応法です。

ルール3:共通点と相違点の両方に言及する

2026年新基準では「and/or」の柔軟性が認められましたが、共通点か相違点の一方だけに寄りすぎると「比較の深さ」で減点されます。論点の少なくとも1つは共通点、1つは相違点に当てておくのが安全です。

作品選びのルール:IOとHL Essayで使った作品はNG

見落としがちですが、Paper 2で使う2作品は、Individual Oral(IO)とHL Essayで使った作品と重複してはいけません。これはIB公式の規則で、違反すると評価対象外になるリスクがあります。

対策:

  • DP1の段階で、学習予定の作品リストをIO・HL Essay・Paper 2の3枠に割り振っておく
  • Paper 2用には時代・文化・ジャンルが異なる2作品を選ぶと比較の軸が作りやすい
  • 同じ作家の2作品は避ける(比較の論点が狭まる)

設問選びの時間配分

1時間45分の使い方の目安:

  • 設問を4問全て読む:5分
  • 2〜3問に絞って、各問で使える作品と比較軸をメモ:10分
  • 最終的な1問を決定し、アウトラインを書く:10分
  • 本文執筆:75分(1段落あたり約10分)
  • 見直し:5分

設問選びで焦らないために、事前にどの型がどの設問タイプに使えるかの対応表を作って持って入るのが最強の準備です。本番では対応表を思い出して、最も得意な型が使える設問を選ぶだけ。

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出典

  • International Baccalaureate Organization (IBO)「Language A: Language and Literature course」公式サイト:https://ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/language-and-literature/language-a-language-and-literature/
  • IB「DP Language A Literature and Language and Literature Summary of Changes for Teachers」September 2024
  • West Sound Academy LibGuides「IB Language and Literature HL (First Assessment 2026) - Assessment Descriptions and Criteria」
  • Lead Academics「IB English A Paper 2 2026: Essential Guide to New Assessment Criteria」
  • thinkIB「DP English A: Language and Literature - Changes to Paper 2 for May 2026 Exams and Beyond」