「ESSはGroup 3とGroup 4どっちでカウントされるの?」「2026年5月から新シラバスってどう変わった?」
ESS(Environmental Systems and Societies)は、IB DPの科目の中で唯一Group 3(Individuals and Societies)とGroup 4(Sciences)の両方に対応する学際的科目です。2024年8月から新シラバスがスタートし、2026年5月がFirst Assessmentで、本記事執筆時点が新シラバス初の本試験を迎えるタイミングにあたります。
この記事では、IBO(International Baccalaureate Organization)公式ESS Subject Guide(First Assessment 2026)に基づき、ESSの構造、HL/SLの違い、7トピック、HL専用の3レンズ、評価方式を整理します。
目次
- ESSとは何か
- Group 3とGroup 4両対応の柔軟性
- 新シラバス(2026年First Assessment)の概要
- 7つのコアトピック
- HL専用3レンズ:環境法・環境経済学・環境倫理
- 評価構成(Paper 1・Paper 2・IA)
- Internal Assessment(IA)の特徴
- ESSが向いている生徒像
- IBの勉強でお悩みですか?
ESSとは何か
ESSは、自然環境のシステムと、人間社会との相互作用を科学的・社会的の両面から学ぶ学際的科目です。「自然科学だけ」「社会科学だけ」では捉えきれない地球規模の課題(気候変動、生物多様性損失、水資源、食料、土壌、都市化)を扱います。
IBO公式の定義によれば、ESSは「環境問題の理解と評価のための学際的な視点を提供し、批判的に考え、持続可能な解決策を見出す能力を育成する」科目とされています。
Group 3とGroup 4両対応の柔軟性
DPでは6つの教科群(Group 1〜6)からそれぞれ1科目を選びますが、ESSは唯一Group 3かGroup 4の好きな方にカウントできる科目です。
- ESSのみ履修:Group 3またはGroup 4の枠を埋める
- ESS + Biology(など別Group 4科目):ESSをGroup 3、BiologyをGroup 4
- ESS + Geography(など別Group 3科目):ESSをGroup 4、GeographyをGroup 3
この柔軟性により、たとえば「Geographyを取りたいがGroup 4も埋めたい」「BiologyとESS両方やりたい」といった希望を1科目で解決できます。
特にHistory・Geography・Economicsなど社会科学に強い生徒で、自然科学の必修枠を満たすために科学色の強すぎないESSを選ぶケースが多くあります。
新シラバス(2026年First Assessment)の概要
IBO公式情報によれば、新ESSシラバスのスケジュールは次の通りです。
- 新シラバス発表:2024年2月
- First Teaching:2024年8月(北半球)/2025年1月(南半球)
- First Assessment:May 2026(北半球)/November 2025(南半球)
- Last Assessment(旧シラバス):May 2025(北半球)/November 2024(南半球)
旧ESSは「SLのみ」の科目でしたが、新シラバスからHLが正式に導入されました。HLでは、SL内容に加えて環境課題をより深く分析するための3レンズ(環境法、環境・生態経済学、環境倫理)が追加されています。
7つのコアトピック
新シラバスのコア内容は7つのトピックで構成されています。
- Topic 1:Foundations of environmental systems and societies:基礎概念(システム思考、持続可能性、世界観)
- Topic 2:Ecology and ecosystems:生態学、生態系の構造と機能、エネルギー流、物質循環
- Topic 3:Biodiversity and conservation:生物多様性、絶滅、保全戦略
- Topic 4:Water:水資源、水質、海洋システム、水の管理
- Topic 5:Land and soil systems:土壌の形成と劣化、農業システム、食料安全保障
- Topic 6:Atmosphere and climate change:大気組成、気候システム、気候変動
- Topic 7:Human systems:人口、都市化、エネルギー利用、廃棄物管理
これら7トピックはSL・HL共通で学習し、HLは追加の深さを各トピックで扱います。
HL専用3レンズ:環境法・環境経済学・環境倫理
新シラバスのHL専用要素として、7トピックの内容を3つの「レンズ」を通して深く分析することが求められます。
1. Environmental Law(環境法) 国際条約(パリ協定、生物多様性条約など)、国内法、規制の仕組み、違反への対処、法的フレームワークの限界を扱います。
2. Environmental and Ecological Economics(環境・生態経済学) 外部費用、エコシステムサービスの経済評価、サーキュラーエコノミー、グリーンGDP、市場ベースの環境政策(炭素税、排出権取引)を扱います。
3. Environmental Ethics(環境倫理) 人間中心主義 vs 生態中心主義、世代間正義、環境正義、先住民の知識システムとの対話、企業の倫理的責任を扱います。
3レンズはTOK・EEとも親和性が高く、ESSをHLで取る生徒は、これらの観点を意識した探究型の学びが期待されます。
評価構成(Paper 1・Paper 2・IA)
新シラバスの評価構成は次の通りです。
Paper 1(SL/HL共通の構造) 資料ベースの問題(Resource booklet)が事前または当日配布され、それに基づいてデータ分析、地図読解、評価問題などを解きます。
Paper 2(SL/HL共通の構造) 短答問題と拡張記述問題(extended response questions)の混合で、トピック横断的な思考が求められます。HLは追加で3レンズに関する設問が含まれます。
Internal Assessment(IA) 個人探究プロジェクト。SL/HL共通で実施され、最終評価の25%を占めます(残り75%が外部試験)。
Internal Assessment(IA)の特徴
ESSのIAは「個人で調査研究」を行うプロジェクトで、テーマは生徒が自由に選びます。10時間程度の調査時間が標準です。
良いESS IAテーマの特徴は次の通りです。
- 環境システムと人間社会の両方が絡む:単なる科学実験ではなく、社会的文脈を含む
- データ収集が現実的に可能:地域の河川、土壌、生態系、気候データなど
- 変数が明確で測定可能:質的データだけでなく定量データを伴う
例:「都市部と郊外での街路樹のCO2吸収量比較」「学校給食の食品廃棄量と環境負荷」「地域河川の水質指標調査」「家庭の電力消費と再生可能エネルギー導入の関係」。
評価基準(Criteria)は、Identifying Context、Planning、Results, Conclusion and Evaluation、Engagement の4つで、Personal Engagementが採点される点が他のIAと共通です。
ESSが向いている生徒像
ESSを選ぶべき生徒の特徴をまとめると次の通りです。
- 環境問題・SDGsに関心がある:気候変動、生物多様性、持続可能性に強い興味がある
- 学際的な思考が好き:科学だけ・社会科だけでは物足りない
- 記述問題が得意:Paper 2は記述比重が高い
- データ分析と倫理的議論の両方に魅力を感じる:HLレベルでは特に重要
- 将来、環境政策・サステナビリティ・国際協力・環境エンジニアリングに興味:大学での環境系学部に直結
ESSは「物理・化学のような厳密な科学計算が苦手だが、自然と社会の繋がりに関心がある」生徒にとって、Group 4要件を満たしつつ自分の興味で学べる稀有な選択肢です。
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出典
- International Baccalaureate Organization (IBO) — Environmental systems and societies updates公式ページ(https://ibo.org/university-admission/latest-curriculum-updates/environmental-systems-and-societies-updates/)
- IBO — ESS Subject Brief(First Assessment 2026)
- IBO — Environmental systems and societies公式ページ
- ManageBac — New DP Environmental Systems & Societies (ESS): What to Expect