「IAって結局、何をどこまでやればいいの?」
IB DP生なら、一度はこう思ったことがあるはずです。IAは全ての科目に存在し、科目によって形式も評価基準も全く違う。しかも、6科目全てのIAを並行して進めなければならない。混乱するのは当然です。
この記事では、IAの基本的な仕組みから、主要科目ごとのIA概要、全科目共通の高得点ポイント、よくある失敗パターン、そしてスケジュール管理まで、網羅的にまとめました。IAに関する疑問は、この1記事で解消してください。
IAの基本情報についてはIAとは?でもまとめていますので、あわせてどうぞ。
IA(Internal Assessment)とは何か
IAは、各科目の成績の一部を構成する「内部評価」です。学校の先生が採点し、IBがモデレーション(調整)を行います。
IAの基本的な特徴:
- 全ての科目に存在する(形式は科目によって異なる)
- 最終成績の約20〜25%を占める(科目による)
- 学校の先生が採点→IBがモデレーション
- 提出締切は学校ごとに設定(通常Year 2の前半)
IAは期末試験(External Assessment)とは違い、時間をかけて準備できる課題です。つまり、やり方次第で確実に高得点が取れるパートでもあります。試験一発の運に左右されない分、しっかり準備した生徒とそうでない生徒の差が大きく出るのがIAの特徴です。
科目別IA概要
ここからは、主要科目のIAについて、形式・評価基準・ポイントを見ていきます。
Sciences(Biology / Chemistry / Physics)
形式: 実験レポート(Individual Investigation) 語数: 約6〜12ページ(語数上限なし、ただし簡潔さが求められる) 配点: 最終成績の20%
Science IAは、自分で実験を設計し、データを収集・分析して結論を導くレポートです。
評価基準(5つの観点):
- Personal Engagement - テーマへの個人的な関心
- Exploration - リサーチクエスチョンと背景理論の説明
- Analysis - データの処理と分析
- Evaluation - 実験の限界と改善点の考察
- Communication - レポートの構成と明確さ
高得点のポイント:
- リサーチクエスチョンは測定可能で、独立変数と従属変数が明確なものにする
- データ処理ではグラフ、不確かさ(uncertainty)の計算、統計的分析を適切に使う
- Evaluationでは「うまくいかなかった点」を正直に書き、具体的な改善案を提示する
- Personal Engagementは「なぜこのテーマを選んだか」を具体的に。「面白そうだった」では不十分
Biology IAのテーマについてはBiology IAテーマで、Chemistry IAについてはChemistry IAテーマでアイデアを紹介しています。
History
形式: 歴史調査(Historical Investigation) 語数: 最大2,200語(3つのセクション合計) 配点: 最終成績の25%
History IAは、自分で設定した歴史的問いについて調査し、資料を分析する課題です。
構成(3セクション):
- Section 1: Identification and Evaluation of Sources(約500語) - 2つの資料の価値と限界を分析
- Section 2: Investigation(約1,300語) - 問いに対する調査と議論
- Section 3: Reflection(約400語) - 歴史家の方法論についての振り返り
高得点のポイント:
- Section 1では、資料の「Origin(出自)」「Purpose(目的)」「Value(価値)」「Limitation(限界)」を具体的に分析する
- Section 2では、複数の視点から議論を展開し、自分なりの結論を導く
- Section 3では、「この調査を通じて歴史研究の難しさや方法論について何を学んだか」を具体的に書く
- 一次資料と二次資料のバランスが重要
History IAの書き方はHistory IA書き方で詳しく解説しています。
Economics
形式: コメンタリー(Portfolio of Three Commentaries) 語数: 各コメンタリー最大800語(合計3本) 配点: 最終成績の20%
Economics IAは、実際のニュース記事を題材に、経済理論を適用して分析するコメンタリーを3本書きます。
ルール:
- 3本はそれぞれ異なる分野(Microeconomics、Macroeconomics、Global/International Economics)から
- 使用する記事は発行から1年以内のもの
- 同じ記事を2本以上で使えない
高得点のポイント:
- ニュース記事の内容を要約するだけでなく、経済理論(需要供給曲線、市場の失敗、財政政策など)を使って分析する
- ダイアグラム(グラフ・図)を適切に使い、本文中で必ず言及する
- 記事に書かれていない「この先どうなるか」「他にどんな影響があるか」を考察する
- 800語の制限が厳しいので、無駄な表現を徹底的に削る
Economics IAの詳しい書き方はEconomics IAガイドを参照してください。
Mathematics(AA / AI)
形式: 数学的探究(Mathematical Exploration) 語数: 約6〜12ページ 配点: 最終成績の20%
Math IAは、自分が関心を持つ数学的なテーマについて探究するレポートです。
評価基準(5つの観点):
- Presentation - 構成、フォーマット、読みやすさ
- Mathematical Communication - 数学的な記号・表記の正確さ
- Personal Engagement - テーマへの個人的な関心
- Reflection - 結果の意味や限界についての考察
- Use of Mathematics - 数学の正確さと適切さ
高得点のポイント:
- テーマは「自分の興味」と「数学的な深み」の両方が必要。スポーツの統計、音楽と数学の関係、建築における幾何学など、身近なテーマに数学を適用するのがおすすめ
- SLとHLでは求められる数学のレベルが異なる。HLの場合、微積分や統計の高度な応用が求められる
- 計算だけでなく、「なぜこの数学を使うのか」「結果はどう解釈できるのか」を文章で説明する
- グラフや図は見やすく作成し、本文中で必ず言及する
Language and Literature(English A / Japanese A)
形式: Individual Oral(IO) 時間: 15分(プレゼン10分 + 質疑応答5分) 配点: 最終成績の30%
Language and Literature(言語と文学)のIAは、口頭発表(Individual Oral)の形式で行われます。
構成:
- 文学作品(Literary Work)と非文学テキスト(Non-literary Body of Work)を1つずつ選ぶ
- グローバルな問題(Global Issue)を設定し、両テキストがその問題をどう描いているかを分析する
- 10分間のプレゼンテーション + 5分間の質疑応答
高得点のポイント:
- Global Issueは具体的に設定する。「ジェンダー」ではなく「メディアにおけるジェンダーの表象と権力構造」のように
- 2つのテキストをバランスよく扱う(片方に偏らない)
- 質疑応答では、試験官の質問に対して柔軟に応答する力が問われる
- 練習を重ねることが重要。時間配分は特に注意
その他の科目
Visual Arts IA - 比較研究(Comparative Study)と展示(Exhibition) Music IA - 楽曲分析やパフォーマンス(コースによって異なる) Psychology IA - 実験レポート(既存の研究を再現する形式) Computer Science IA - ソフトウェアの開発プロジェクト
いずれの科目でも、IAは「自分で問いを立て、探究し、結果を示す」というプロセスが共通しています。
全科目共通の高得点ポイント
科目ごとの特徴を理解した上で、どのIAにも当てはまる高得点のポイントを整理します。
ポイント1:評価基準(Rubric)を熟読する
これが最も重要です。IBは全てのIAについて、詳細な評価基準(ルーブリック)を公開しています。各観点で何が求められているかを正確に理解し、それを意識しながら書くことが、高得点への最短ルートです。
「何となく良いものを書けば点が取れる」というアプローチでは、必ずどこかで点を落とします。
ポイント2:Personal Engagementを甘く見ない
多くの科目で「個人的な関心・関与」が評価項目に含まれています。これは「なぜ自分がこのテーマに興味を持ったか」を具体的に示すことです。
「授業で習ったから」「先生に勧められたから」では評価されません。自分の経験、疑問、好奇心と結びつけて、テーマへの本物の関心を示しましょう。
ポイント3:先生のフィードバックを最大限活用する
IAは内部評価なので、先生がフィードバックをくれる機会があります(回数は学校や科目の規定による)。このフィードバックを「もらって終わり」にしないこと。指摘された点を一つひとつ確認し、具体的に修正する。修正した箇所を先生に見せて、正しい方向に進んでいるか確認する。このサイクルが質を高めます。
ポイント4:構成と見やすさに気を配る
内容が良くても、読みにくいレポートは評価が下がります。
- 見出し(H2、H3)で構造を明確にする
- 段落は適度な長さに分ける
- グラフや図には必ずタイトルとラベルをつける
- 参考文献は統一されたフォーマットで
- ページ番号をつける
ポイント5:Academic Honestyを厳守する
引用や参考文献の管理は、全てのIAで必須です。他人のアイデアを自分のもののように書くことは、剽窃(Plagiarism)として厳しく罰せられます。IBはTurnitinなどの剽窃検出ツールを使っているため、「バレないだろう」は通用しません。
IAの書き方の基本についてはIA書き方ガイドでも詳しくまとめています。
IAでよくある失敗パターン
失敗1:テーマが野心的すぎる
「ノーベル賞級の実験をしよう」「誰も研究していないテーマを選ぼう」という気持ちは分かりますが、高校生の環境と時間では実現困難です。シンプルでも、丁寧に実行された研究のほうが確実に評価されます。
失敗2:データの分析が浅い
Science IAで特に多い失敗です。実験でデータを集めたものの、グラフを作って終わり。不確かさの計算もなければ、外れ値の説明もない。データ分析の深さは、そのまま得点に直結します。
失敗3:締切直前の駆け込み
6科目のIAを全て抱えると、どれかが後回しになりがちです。しかし、締切直前に書いたIAは、内容の浅さが明らかに出ます。先生も多くのIAを読んでいるので、「急いで書いた」ことはすぐに分かります。
失敗4:先生の指示を聞いていない
学校やIBの規定で「IAに含めてはいけない情報」「フォーマットのルール」などが決まっています。例えば、Science IAでは「名前をレポートに記載しない」という規定がありますが、これを知らずに名前を入れてしまう生徒がいます。
失敗5:他のIAと混同する
Economics IAのコメンタリーとHistory IAの調査は全く別の形式なのに、書き方を混同してしまうケースがあります。各科目のIA要件を個別に確認することが大切です。
失敗6:Reflectionを後回しにする
Science IAのEvaluationやHistory IAのSection 3は、いわば「振り返り」の部分です。本論を書き終えた後に付け足しで書く生徒が多いのですが、この部分こそ高得点の鍵です。「何がうまくいかなかったか」「どう改善できるか」を具体的に書くことで、批判的思考力が評価されます。
IA年間タイムライン
6科目のIAを並行して進めるには、スケジュール管理が不可欠です。以下は一般的な目安です。
Year 1(DP1年目)
9月〜12月:IAの存在を意識し始める
- 各科目のIAの形式と評価基準を確認する
- 授業の中で「これはIAのテーマに使えそう」という視点を持つ
- Science系の科目は実験スキルを磨いておく
1月〜3月:テーマの検討開始
- 各科目で候補テーマをリストアップ
- 先生と初期相談
- Economics IAは使えそうなニュース記事のストックを始める
4月〜6月:一部のIAに着手
- 学校によっては、Year 1の終わりに提出する科目もある
- Science IAの実験は、できる範囲で夏前に始める
- IO(Language A)の準備として、作品の精読を進める
夏休み
7月〜8月:集中作業期間
- Science IAの実験データ収集
- History IAのリサーチ
- Math IAのテーマ決定と予備調査
- Economics IAのコメンタリー1本目の下書き
夏休みにどれだけ進められるかが、Year 2の余裕を決めます。全てのIAに手をつける必要はありませんが、最低2〜3科目は具体的に動き始めましょう。
Year 2(DP2年目)
9月〜11月:執筆・修正の本格化
- 各科目のIAのドラフトを仕上げる
- 先生にフィードバックを依頼
- IO(Language A)のリハーサルを始める
12月〜1月:最終仕上げ
- フィードバックを反映して修正
- 全てのIAの最終チェック(フォーマット、引用、語数)
- IOの練習を重ねる
2月〜3月:提出
- 学校の締切に合わせて順次提出
- IOの録音・提出
スケジュール管理のコツ
1. 提出順を把握する 学校によって、どの科目のIAを先に提出するかが違います。年度初めに全科目の締切を一覧にして、優先順位を決めましょう。
2. 2週間ルールを作る 1つのIAにかかりきりになると、他のIAが止まります。「2週間ごとに取り組むIAを切り替える」のようなルールを作ると、全体的にバランスよく進められます。
3. 「完璧」を目指さない 6科目全てのIAを完璧にすることは現実的ではありません。自分にとって重要な科目(HLや大学で使う科目)のIAに重点を置き、優先順位をつけましょう。
IAを乗り越えるために
IAは、IB DPの中でも最も時間と労力がかかるパートです。でも、だからこそIAで良い成績を取れば、最終スコアの安定した土台になります。試験は当日のコンディションに左右されますが、IAは準備次第で確実にコントロールできる部分です。
6科目のIAを同時に進めるのは、正直かなり大変です。「どこから手をつけていいかわからない」「特定の科目のIAだけどうしても進まない」という状況になったら、早めにサポートを求めることが大切です。
IB卒業生の講師なら、各科目のIAを実際に経験しているからこそ、「ここでつまずきやすい」「この科目はこうすると効率的」という実践的なアドバイスができます。一人で抱え込まず、使えるリソースは全て活用しましょう。
まとめ
IAは、IB DPの全科目に存在する内部評価で、最終成績の20〜25%を占める重要な要素です。
- 科目ごとに形式が全く異なる。各科目のIA要件と評価基準を個別に確認する
- 評価基準(Rubric)の熟読が高得点への最短ルート
- Personal EngagementとReflectionは軽視されがちだが、得点差がつくポイント
- スケジュール管理が生命線。夏休みの活用とYear 2前半の集中が鍵
- Academic Honestyは絶対厳守。引用管理は最初から丁寧に
- 困ったら早めに先生やチューターに相談する
IAは大変ですが、6科目全てを仕上げたとき、確実に一回り成長した自分がいます。計画的に、着実に、一つずつ進めていきましょう。