「IBの試験で配慮を受けられると聞いたけど、どうやって申請するの?」「ディスレクシアやADHDがあるけど、IBの試験で追加時間をもらえる?」
IBはInternational Baccalaureate Organization(IBO)公式のAccess and Inclusion Policyに基づき、長期的または恒久的な学習上の困難を持つ生徒に対して**Inclusive Assessment Arrangements(包摂的評価配慮)**を提供しています。すべてのIBプログラム(DP、CP、MYP、PYP)で運用されています。
この記事では、IBO公式Access and Inclusion Policyに基づき、配慮対象、提供される配慮の種類、申請プロセス、必要書類を整理します。
目次
- Inclusive Assessment Arrangementsとは
- 配慮の対象となる生徒
- 提供される主な配慮の種類
- 申請の基本ルール:6ヶ月前ルール
- 申請プロセス(IBIS経由)
- 必要書類と専門家のレポート
- Optimal Supportの原則
- 日々の授業での配慮の継続
- IBの勉強でお悩みですか?
Inclusive Assessment Arrangementsとは
Inclusive Assessment Arrangementsは、IBO公式の定義によれば「標準的な評価条件下では学習支援を必要とする生徒が不利益を被る場合に、能力を公正に発揮できるよう、評価条件を調整する仕組み」です。
これは「特別扱い」ではなく、評価の公平性を保つための合理的配慮として位置付けられています。配慮を受けても、達成基準や試験内容自体は他の生徒と同じです。
IBOの統計によれば、世界中で数万人のIB生徒が、何らかの形で配慮を受けて評価に臨んでいます。
配慮の対象となる生徒
IBO Access and Inclusion Policyの対象は、長期的または恒久的な学習支援が必要な生徒です。具体的には次のようなケースが該当します。
- 学習困難:ディスレクシア、ディスグラフィア、ディスカルキュリア、特定学習症
- 注意・実行機能:ADHD、ADD
- 発達障害:自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群
- 感覚障害:視覚障害、聴覚障害
- 身体的困難:運動機能障害、慢性疾患
- メンタルヘルス:うつ、不安障害、PTSD等のうち長期的影響があるもの
- 医療的ケア:糖尿病など定期的な医療対応が必要な状態
短期的な怪我や一時的な体調不良は、Inclusive Assessment Arrangementsとは別の枠組み(Adverse Circumstances)で扱われます。
提供される主な配慮の種類
IBO公式によれば、提供される配慮には次のような種類があります。
- Additional time(追加時間):通常25%、症状によっては50%まで延長
- Rest breaks(休憩):試験中の休憩を必要に応じて付与(時間は通常加算されない)
- Reader(読み上げ):問題文を音読する人を配置
- Scribe(スクライブ):生徒の口述を試験官が代筆
- Word processor(コンピューター利用):手書きの代わりにPCで回答(スペルチェッカー有無は別判定)
- Modified papers(試験用紙の修正):拡大版、点字版、コントラスト調整版など
- ICT support(情報技術支援):スクリーンリーダー、音声認識ソフトの利用
- Separate room(別室受験):集中力維持や医療対応のため
- Practical assistance(実技支援):科学実験等での補助者配置
- Extensions to deadlines(提出期限の延長):EE、IA等の長期課題で適用
複数の配慮を組み合わせることも可能です。たとえば「ディスレクシアで追加時間50%+スクライブ+別室受験」のように、生徒の状況に応じた組み合わせが認められます。
申請の基本ルール:6ヶ月前ルール
IBOの公式ルールでは、Inclusive Assessment Arrangementsの申請は試験実施の6ヶ月以上前に行う必要があります。
たとえば2027年5月の試験に向けて配慮を申請する場合、2026年11月までに学校のIB Coordinator経由で申請を完了しておく必要があります。
この6ヶ月前ルールは、IBO本部による審査・認可プロセスに必要な時間を確保するためです。期限を過ぎた申請は原則として受理されません。
ただし、入学後に急遽診断されるようなケースもあるため、症状が判明したら可能な限り早期にIB Coordinatorに相談することが重要です。
申請プロセス(IBIS経由)
申請はIBO本部のオンラインシステムIBIS(IB Information System)を通じて行われます。生徒個人ではなく学校(IB Coordinator)が代理で申請する仕組みです。
申請の流れは概ね次の通りです。
- 生徒・保護者がIB Coordinatorに相談:症状や必要と思われる配慮を伝える
- 専門家による評価:医師、心理士、スピーチセラピスト等による診断とレポート作成
- 学校内での配慮計画作成:日常授業から配慮を実装し、効果を観察
- IBISで申請書類を提出:診断レポート、学校での配慮実績、要請する配慮の種類を提出
- IBO本部による審査:審査結果が学校に通知される
- 試験当日に配慮実施:認可された配慮内容に基づき試験を実施
申請は生徒登録(Candidate Registration)の後に行う必要があり、登録前の申請はできません。
必要書類と専門家のレポート
IBO公式が要求する診断レポートの要件は次の通りです。
- 作成者:当該分野の評価・診断資格を持つ専門家(医師、臨床心理士、教育心理士、スピーチセラピストなど)
- 言語:英語、フランス語、スペイン語のいずれか(他言語の場合は公式翻訳が必要)
- 時期:申請時から3年以内のものが原則(症状の継続性が確認できる場合は古いものも考慮される)
- 内容:診断名、診断基準、症状の具体的記述、推奨される配慮の種類とその根拠
加えて学校側からの追加書類として、日常授業での配慮実績、教師の観察記録、過去の評価結果なども提出されます。
「専門家の診断書だけ」では不十分で、学校での日常的な配慮実装の証拠が求められる点に注意が必要です。
Optimal Supportの原則
IBOのAccess and Inclusion Policyの中核はOptimal Support(最適支援)の原則です。これは「配慮は生徒が必要とする量だけ・必要な種類だけ提供する」という考え方です。
つまり、過剰な配慮(必要以上の追加時間、不要な支援者)も、過少な配慮(実質的に困難を解消できない設定)も、どちらも公平性を損ねるとされています。
このため、申請する配慮内容は生徒の症状と直接結びつく合理的な範囲である必要があります。「念のため最大限申請しておこう」というアプローチは却下される可能性があります。
日々の授業での配慮の継続
IBOは「試験当日だけ配慮を受ける」ことを認めていません。配慮は日常の授業・課題・小テストでも継続的に実装され、生徒の学習に統合されている必要があります。
この継続的実装には以下の意味があります。
- 生徒が配慮環境に慣れる:本番だけ初めて使うとパニックを起こす
- 配慮の効果を学校が観察できる:実際に効果があるか、過剰でないかを判断
- IBOが申請時に学校実績を確認できる:審査の合理性を担保
このため、配慮申請の有無に関わらず、症状が判明した段階で学校での配慮実装を始めるのが正しいプロセスです。
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出典
- International Baccalaureate Organization (IBO) — Access and inclusion policy(公式PDF)
- IBO — Inclusive education in the IB公式ページ(https://ibo.org/programmes/inclusive-education-in-the-ib/)
- IBO — Inclusive access arrangements: Decision pathway
- IBO — Diploma Programme Assessment procedures