「Chemistry IAのテーマを決めたい。苦手科目だからシンプルな実験にしたい。滴定・電気分解・メッキのどれがいい?」

Chemistry IAは2026年5月セッションから新しい評価基準が適用されており、最大3,000字で4つのCriterionで採点されます。苦手意識がある生徒こそ、時間効率と誤差の少ない実験選びが7への最短ルートです。

この記事では、IB公式の新IA評価基準に基づき、初心者に推奨される3つの実験タイプ(滴定・電気分解・電気メッキ)の特徴を比較し、失敗しないテーマ選びを整理します。

目次

Chemistry IA の基本仕様(2026年5月〜)

IBは2026年5月セッションから、Sciences IAの評価基準を刷新しました。Chemistry IAの新仕様:

  • 文字数:最大3,000字
  • 評価基準:4 Criteria × 6 marks = 24 marks
    • Research design(リサーチデザイン)
    • Data analysis(データ分析)
    • Conclusion(結論)
    • Evaluation(評価)
  • 最終評価に占める割合:SL・HLともに 20%
  • 協働:最大3人までのグループ作業可(独自RQと独自データ必須)

新基準での失点ポイント

  • Research designで「方法論が第三者に再現可能なレベルで書けていない」
  • Data analysisで「不確かさ(uncertainty)の計算が粗い、または記載なし」
  • Conclusionで「データから導ける範囲を超えた主張をしている」
  • Evaluationで「限界点の指摘が『人的ミスが原因』レベルで止まっている」

失敗しない実験テーマの3つの条件

条件1:過去の先行研究・先輩IAが豊富にある

前例の多いテーマは、方法論と誤差処理の型が確立されています。Clastifyや先輩IAサンプルで「滴定」「電気分解」の検索結果が多いのは、再現性が高く採点官も慣れているためです。

条件2:シンプルな因果関係で成立する

「変数Aを変えると変数Bがどう変わるか」という単一因果関係で完結する実験を選びます。多変量を同時に扱うと、data analysisの難度が跳ね上がり、3,000字内で論理を整えられません。

条件3:2〜3時間の実験枠で完結する

IA実験に使える学校の実験室枠は限られています。1回の実験で結果が出るテーマを選ぶべきで、培養・長時間反応・毎日データ取得が必要なテーマは時間管理の難度が高くなります。

滴定(Titration):汎用性は高いが時間消費が激しい

滴定の特徴

  • 酸塩基滴定(Acid-base titration)、酸化還元滴定(Redox titration)、錯体滴定(Complexometric titration)、逆滴定(Back titration)など種類豊富
  • 食品・薬品・飲料の分析テーマに結びつけやすい
  • 器具はビュレット・コニカルフラスコ・指示薬の基本セットで対応可能

メリット

  • 化学量論(stoichiometry)の基本が押さえられている生徒なら取り組みやすい
  • 数値データが明確に出るため、Data analysisで不確かさ計算がしやすい
  • 先行例が非常に多く、参考になる資料が豊富

デメリット

  • 1回の滴定に15〜30分。5条件×3反復=15回なら合計4〜7時間
  • 色変化の読み取りに主観が入りやすく、再現性の確保に注意が必要
  • 指示薬選びを間違えると、正しい終点が判定できない

滴定テーマの例

  • 牛乳の脂肪含有量がカルシウムイオン濃度に与える影響(EDTA錯体滴定)
  • 温度がビタミンC濃度の酸化分解速度に与える影響(ヨウ素デンプン滴定)
  • ライム果汁中のアスコルビン酸濃度(ヨウ素逆滴定)
  • 酢の希釈率が中和点に与える影響(酸塩基滴定)

電気分解(Electrolysis):誤差が少なく再現性が高い

電気分解の特徴

  • 電流・電圧・時間を変数として、電極に析出する金属質量を測定
  • 硫酸銅(II)水溶液、塩化銅水溶液、硫酸鉛水溶液などが定番
  • デジタル電源とアンペアメーターがあれば精度の高いデータが取れる

メリット

  • 人的ミスが入りにくく、再現性が非常に高い
  • ファラデーの法則(F = 96,485 C/mol)との比較で理論値との誤差を評価できる
  • データ分析で不確かさ計算がしやすい
  • 10〜15分で1条件分のデータが取れる効率の良さ

デメリット

  • DC電源(直流電源装置)が学校にない場合、実施不可能
  • 電極質量の測定には0.001gレベルの精密電子天秤が必要
  • 温度管理を厳密にしないと、溶液の導電率変化が生じる

電気分解テーマの例

  • 電流の大きさがカソードに析出する銅の質量に与える影響
  • 電解液の濃度が析出速度に与える影響
  • 電極間距離が電気分解効率に与える影響
  • 温度の変化が電気分解速度に与える影響

電気メッキ(Electroplating):装置があれば最も取り組みやすい

電気メッキの特徴

  • 電気分解の応用。金属イオン溶液中でカソード(被メッキ物)に金属を析出させる
  • 銅メッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキなどが可能
  • 建築・工業現場での実用例と結びつけやすい(リアルワールドコンテクスト)

メリット

  • 電気分解と同じ器具で、目に見える「メッキ層」が得られるため結果の実感が強い
  • カソード質量の増加量で定量的評価が可能
  • 化学と物理の接点にあるテーマで、Criterion C(結論)で多面的な考察がしやすい

デメリット

  • 溶液の調製に注意が必要(硫酸銅の濃度管理)
  • メッキ層の厚みにムラが出ることがあり、質量測定だけではなく写真記録も有用
  • 長時間のメッキでは電極消費が無視できなくなる

電気メッキテーマの例

  • 硫酸銅濃度が黒鉛カソード上の銅メッキ質量に与える影響
  • 電流密度がメッキ層の均一性に与える影響
  • メッキ時間と析出質量の非線形関係の検証
  • 添加剤(グルコース、ゼラチンなど)がメッキ品質に与える影響

温度・濃度を扱う実験の落とし穴

温度を独立変数にする場合の注意

  • 水浴やホットプレートでの温度維持は、実際には±2〜5°Cの範囲で変動する
  • 測定中に反応熱で温度が上昇することがある
  • 温度管理の難度が高く、不確かさ(uncertainty)が大きくなりがち

濃度を独立変数にする場合の注意

  • モル濃度の正確な調製には、メスフラスコと電子天秤が必要
  • 希釈の過程で誤差が蓄積する
  • 0.1M、0.2M、0.5M、1.0M、2.0Mのような幅広い濃度範囲を設定すると、データ分析で線形関係が見えやすい

初心者向けの推奨変数

  • 第1選択:電流・電圧(デジタル制御可能、誤差最小)
  • 第2選択:時間(ストップウォッチで正確に測定可能)
  • 第3選択:濃度(事前準備が丁寧なら対応可)
  • 第4選択:温度(管理難度が高く、初心者には推奨度低)

初心者におすすめの5つのRQ例

RQ1:「電流の大きさ(0.5A、1.0A、1.5A、2.0A、2.5A)が硫酸銅(II)水溶液の電気分解で10分間にカソードに析出する銅の質量に与える影響」

RQ2:「硫酸銅(II)水溶液の濃度(0.1M、0.2M、0.4M、0.6M、0.8M)が、1.0A、10分の電気メッキで黒鉛カソードに析出する銅の質量に与える影響」

RQ3:「温度(20°C、30°C、40°C、50°C、60°C)がアスコルビン酸のヨウ素滴定による定量結果に与える影響」

RQ4:「牛乳の脂肪含有量(0%、1%、2%、3.5%、4.5%)がEDTA滴定で測定されるカルシウムイオン濃度に与える影響」

RQ5:「炭酸飲料の希釈率(原液、2倍、4倍、8倍、16倍希釈)が酸塩基滴定で測定される酸度に与える影響」

すべて独立変数1つ・従属変数1つ・5水準以上・3反復以上でデータを取れば、Criterion B(Data analysis)で6点満点を狙えます。

予備実験の計画とタイムライン

推奨タイムライン(DP1後期開始〜DP2前期提出)

  • DP1・1月〜2月:テーマ候補を3つ選定、文献調査
  • DP1・2月〜3月:予備実験(1条件での試験)、RQ仮決定
  • DP1・3月〜5月:本実験(5条件×3反復)、データ収集
  • DP1・6月〜8月(夏休み):データ分析、初稿執筆
  • DP2・9月〜10月:先生からのフィードバック、修正
  • DP2・11月〜12月:最終版完成、提出

予備実験の重要性

予備実験を飛ばして本実験を開始すると、装置の不具合や想定外のエラーで数週間を無駄にするリスクがあります。1条件を1〜2回試して、測定値の安定性・時間の目安・必要な器具を確認してから本実験に入ります。

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出典

  • International Baccalaureate Organization (IBO)「Chemistry subject guide」(First assessment 2025年11月/新Chemistry guide)
  • TutorChase「IB Chemistry IA: 70 Examples and Guidance (2026)」
  • Clastify「IB Chemistry IA examples」
  • TutorsPlus「30 Great Chemistry IA Topic Ideas」
  • Blen「20 Amazing Chemistry IA Ideas to nail your IB Score」