この記事は、IBTに通う生徒さんの保護者の方にインタビューした内容をもとに、保護者目線でIBの体験を語っていただいたものです。IBをこれから始めるお子さんを持つ保護者の方にも、きっと参考になる内容だと思います。
「何をやっているのかわからない」という不安
正直に言います。子どもがIBを始めてから、学校の課題を見ても何をやっているのか全くわかりませんでした。
TOKって何? EEって何? IAって何? 略語だらけで、まずそこからわからない。子どもに「今日何やったの?」と聞いても、「TOKのエッセイ書いてた」と言われるだけで、それが何なのか理解できない。
普通の高校なら「数学のテスト勉強」とか「英語の長文読解」とか、イメージがつきます。でもIBは、親にとって未知の世界でした。
最初にぶつかった略語の壁
DPが始まった直後、子どもが「今月中にCASのReflectionを3つ書かないといけない」と言ったとき、私は「CAS? Reflection?」と聞き返すしかありませんでした。子どもは「説明するのが面倒」と言って部屋に戻ってしまい、会話が終わってしまったんです。
その夜、インターネットで「IB DP CAS とは」と検索して、ようやくCreativity, Activity, Serviceの略で、課外活動の記録が必要なのだと知りました。でも、知ったところで「Reflectionの書き方」までは教えてあげられない。この無力感は、DPの2年間ずっと続きました。
6科目+3つのコアの全体像がつかめない
IBのDP は6科目に加えて、TOK(Theory of Knowledge)、EE(Extended Essay)、CASという3つのコア要素があります。これらが同時進行で進んでいくのですが、全体像を把握するまでに半年以上かかりました。
子どもが「今週はEEのスーパーバイザーとの面談がある」と言ったかと思えば、「TOKのプレゼンの準備をしないと」と言い出す。何が今一番大事なのか、親にはさっぱりわからないんです。
手伝えないもどかしさ
子どもが「EEのテーマが決まらない」と悩んでいるのを見て、「一緒に考えよう」と言いたいけど、そもそもEEが何を求められているのかわからない。子どもの方が詳しいので、アドバイスのしようがないんです。
これが一番辛かったです。自分の子どもが困っているのに、何もできない。
IAの実験でキッチンが占拠された日
ある日、子どもがBiology HLのIAの実験をするために、キッチンのテーブルを丸ごと占拠しました。何か植物の成長に関する実験で、毎日決まった時間にデータを取る必要があると言います。
「手伝おうか?」と聞いたら、「触らないで。変数が変わるから」と言われました。「変数」という言葉の意味はわかるけど、なぜ私が触ると実験がダメになるのかがわからない。ただ見守ることしかできませんでした。
2週間後、実験データが思うような結果にならず、子どもが泣いていました。「もう一回やり直す」と言って、またキッチンが占拠されました。このとき私にできたのは、実験に使うスペースを確保してあげることと、「大丈夫、きっとうまくいくよ」と声をかけることだけでした。
「普通の高校だったらこんな苦労はなかったのに」と思った瞬間
正直に言うと、何度かこう思いました。特に、周りのママ友の子どもたちが「テスト範囲を一緒に勉強してあげた」という話を聞いたとき。うちの子には、それができないんです。
でも、IBを選んだのは子ども自身です。親として、その決断を尊重して最大限サポートするしかない。そう自分に言い聞かせていました。
英語の壁
うちの子は日本語メインで育ったので、英語での論文やプレゼンに苦労していました。でも、私たち親は英語が得意ではない。添削もしてあげられないし、英語の参考書を買ってあげても、それが正しいのかどうかもわからない。
English B HLのIOで泣いた日
子どもがEnglish BのIO(Individual Oral)の練習をしているのを聞いたとき、英語はそれなりに話せているように聞こえました。でも子ども自身は「発音が悪い」「語彙が足りない」「ネイティブの子と比べたら全然ダメ」と言って、練習のたびに落ち込んでいました。
ある夜、IOの練習を録音して聞き直した子どもが、「もうダメだ」と泣き出しました。私にはIOの評価基準がわからないので、「上手に話せてたよ」と言っても「ママにはわからないでしょ」と返されてしまう。本当に何もできなくて、一緒に泣きそうでした。
IBTの先生に救われた
IBTの先生にお願いしてからは、英語面のサポートはお任せできるようになって、少し楽になりました。先生自身がIBを経験しているので、子どもの悩みをピンポイントで理解してくれます。「English BのIOはこういう評価基準だから、こう準備すればいい」と具体的なアドバイスをもらえたことで、子どもの表情が明らかに変わりました。
親には理解できないことを理解してくれる大人がいる、というだけで、親子ともに安心感が全然違いました。
成績の見方がわからない
IBは7段階評価で、最初は数字を見てもピンときませんでした。「5って良いの? 悪いの?」と聞いたら、子どもに「まあまあ」と言われて、それ以上聞けなくなる。
最終スコア45点満点の仕組み
後で調べて、6科目それぞれが7点満点で合計42点、TOKとEEのボーナスが最大3点で合計45点満点だと知りました。世界平均が約30点で、36点以上あればかなり優秀だということも。
この知識があるだけで、子どもの成績を見る目が変わりました。子どもが「History HLで6取れた!」と報告してくれたとき、「すごいね!」と心から言えるようになりました。IBのスコアの仕組みを早めに理解しておくことをお勧めします。
Predicted Scoreという概念
もう一つわかりにくかったのが「Predicted Score(予測スコア)」です。大学出願に使われる重要な数字だとは知っていましたが、最終スコアとは別物で、先生が予測する点数だということを理解するまでに時間がかかりました。
子どもが「Predictedが低い」と焦っているとき、何がどう低いのか、それがどの大学に影響するのかがわからない。後から振り返ると、このあたりの仕組みを早い段階で勉強しておくべきでした。
精神的なサポートの難しさ
DPの2年間、子どもが何度も「もう無理」「辛い」と言うのを聞きました。試験前は特に。
「頑張れ」と言うのは簡単だけど、IBの大変さを実感していない親が言っても響かない。かといって「休んでいいよ」と言うのも、甘やかしているだけのような気がして。
「もうIBやめたい」と言われた夜
DP1年目の終わり頃、子どもが真剣な顔で「IBやめたい」と言いました。Course Selectionを間違えた、HLが難しすぎる、もうついていけない、と。
正直、動揺しました。ここで「いいよ、やめなさい」と言うべきなのか、「もう少し頑張ってみなさい」と言うべきなのか。結局、その夜は何も結論を出さず、ただ話を聞きました。
翌朝、子どもは自分から「やっぱり続ける」と言いました。「昨日は疲れてた。ごめん」と。でも、あの夜は本当に辛かったです。
結局、一番効果があったのは「聞くこと」
2年間を通じて私がやったのは「話を聞くこと」でした。アドバイスはできなくても、「大変だったね」「よく頑張ってるね」と言うだけで、子どもの表情が少し和らぐのを感じました。
IBの内容は理解できなくても、子どもの気持ちは理解できます。「辛い」と言っているときは、解決策を求めているのではなく、ただ聞いてほしいだけのことが多かったです。
やっておいてよかったこと
IBについて最低限の勉強をした
TOK、EE、CAS、HL、SLの意味。評価の仕組み。最終スコアの計算方法。これだけでも知っておくと、子どもとの会話がだいぶ変わります。IBTの先生に「保護者として知っておくべきことは何ですか?」と質問したのが良かったです。
具体的に役立った知識はこのあたりです。
- 6科目は3つがHL(Higher Level)、3つがSL(Standard Level)
- EEは4000語の論文で、テーマ選びが最も重要
- TOKは知識の本質を探究する科目で、エッセイとプレゼンがある
- CASは課外活動で、Reflectionの記録が必要
- 最終試験は5月に集中して行われる
食事と睡眠の管理
勉強のことはサポートできなくても、生活面のサポートはできます。栄養のある食事を用意する。睡眠時間を確保させる。試験前に好きなお菓子を差し入れする。こういう「当たり前のこと」が、実は一番大事だったかもしれません。
特に試験前の1ヶ月は、子どもが深夜まで勉強することが増えました。せめて温かいスープを作って持っていったり、朝ごはんは少し豪華にしたりしました。「勉強は手伝えないけど、体調管理はお母さんの担当だからね」と伝えたら、子どもが少し笑ってくれました。
プロの力を借りる
親だけで全部をサポートするのは無理です。IBの経験者に相談できる環境を作ったことが、子どもにとっても、私たち親にとっても、大きな安心感になりました。
IBの家庭教師をつけるタイミングについて悩む保護者も多いと思いますが、早めに相談するだけでも気持ちが楽になります。IBTでは保護者からの相談にも対応してくれるので、「親としてどうサポートすればいいか」を直接聞けたのが本当に助かりました。
他の保護者と情報交換できる場がほしかった
振り返って一つ後悔しているのは、他のIB生の保護者との交流がほとんどなかったことです。同じ悩みを持つ親同士で話せたら、もっと楽だったのではないかと思います。
学校の保護者会でIBの話題が出ることはありましたが、深い話はなかなかできませんでした。「うちの子もTOKのエッセイで苦労してて…」と言いたくても、「TOKって何?」と聞き返されてしまうので。IB生の保護者は少数派なので、孤独を感じることもありました。
もし同じ立場の方がこの記事を読んでいたら、一人で抱え込まないでほしいと伝えたいです。IBの保護者向け情報を読むだけでも、「自分だけじゃないんだ」と思えるはずです。保護者が具体的にできるサポートを体系的にまとめたIB保護者サポートガイドもおすすめです。
IBを乗り越えた今
子どもは無事にIB Diplomaを取得して、大学に進学しました。卒業式の日、「IBやってよかった」と言ってくれたとき、2年間の苦労が全部報われた気がしました。
最終スコアが発表された日のことは今でも覚えています。子どもがスマホの画面を見て、しばらく黙った後に「お母さん、取れた」と言いました。涙が出ました。
IBは子どもだけの挑戦ではなく、家族の挑戦です。大変なことも多いけど、その分、一緒に乗り越えたときの喜びは格別です。
まとめ
IB生の保護者として2年間を過ごした経験から、伝えたいことをまとめます。
- IBの内容を全部理解する必要はない。でも最低限の仕組み(評価方法、科目構成、スケジュール)は知っておくと会話が変わる
- 勉強面のサポートができなくても、生活面と精神面のサポートは親にしかできない
- 「聞くこと」が一番の支え。アドバイスより共感
- プロの力を借りることに遠慮はいらない
- IBは家族の挑戦。辛いときは親も辛くて当たり前
- 乗り越えた先には、親子の絆がもっと深まっている
これからIBを始めるお子さんの保護者の方、大丈夫です。わからないことだらけでも、お子さんのそばにいてあげるだけで十分です。