正直に言います。私はMYP時代、数学がそこそこ得意な方でした。だからDPでMath AA HLを選んだんです。「まあ、なんとかなるでしょ」くらいの気持ちで。
結果、DP1年目の中間テストで4を取りました。7段階の4です。MYPでは6や7が当たり前だった自分にとって、かなりのショックでした。
この記事では、そこからどうやって成績を立て直したのか、実体験をもとに具体的にお話しします。今まさにIBの数学で苦しんでいる人に、少しでも参考になれば嬉しいです。
MYPとDPの数学は別物だった
MYPの数学は、パターンを覚えてそれを当てはめれば解ける問題が多かったんです。テスト前に公式を暗記して、練習問題を何回か繰り返せば、6や7は取れていました。
でもDP、特にHLの数学は全く違いました。「なぜそうなるのか」を理解していないと、応用問題が全く解けない。公式を知っていても、どの場面でどの公式を使うかの判断ができないんです。
微分積分が始まった頃から、授業についていくのがやっとになりました。先生の説明は理解できるんですけど、いざ自分で問題を解こうとすると手が止まる。そんな日が続きました。
MYPとDPの数学の違いを整理すると
- MYP: パターンの暗記と適用が中心。手順に従えば解ける
- DP SL: 概念の理解が求められるが、応用の幅は限定的
- DP HL: 複数の概念を組み合わせた応用問題。「なぜ」がわからないと手も足も出ない
この違いに気づいたのが、成績が落ちてからだったのが痛かったです。最初から知っていれば、もっと準備ができたのに。
「もうSLに下げようかな」と思った日
DP1年目の後半、本気でSLへの変更を考えました。テストの点数は上がらないし、HLの内容は難しくなる一方。毎日のように数学に時間を取られて、他の科目にも影響が出始めていました。
親にも相談しました。「そんなに辛いなら下げてもいいんじゃない?」と言ってくれました。でも、大学で理系に進みたいという気持ちがあったので、HLを続ける必要があった。理系学部の多くはMath AA HLを要件にしているからです。
そのとき、IBTの先生に出会いました。
転機になった3つのこと
1. 基礎に戻る勇気
先生に最初に言われたのは「微分積分の前に、関数の理解が曖昧だよ」ということ。正直、プライドが傷つきました。DPなのにMYPレベルの内容に戻るなんて。
でも実際にMYPレベルの関数の問題をやり直してみたら、確かに「なんとなく」で理解していた部分がたくさんあった。二次関数の性質、指数関数と対数関数の関係、三角関数のグラフの意味。どれも「公式は知ってるけど、なぜそうなるかは説明できない」状態でした。
2週間かけて関数の基礎を固め直しました。遠回りに感じたけど、これが一番効果がありました。基礎がしっかりすると、その上に積み上がる微分積分が「あ、そういうことだったのか」と腑に落ちるようになったんです。
2. 問題を解く「型」を作る
先生と一緒に、問題を見たときの思考の手順を整理しました。
- まず「何を聞かれているか」を正確に把握する
- 与えられた情報を全て書き出す
- 使えそうな公式や定理をリストアップする
- 図やグラフを描いてみる
- 最も適切なアプローチを選んで解き始める
当たり前のことなんですけど、焦っているときほどこれを飛ばしていたんです。問題を見た瞬間に「わからない」とパニックになって、何も手をつけられなくなる。
この「型」を意識するようになってから、初見の問題でもパニックにならなくなりました。「わからない」のではなく、「どのステップで詰まっているか」が明確になるので、対処法を考えられるようになったんです。
3. 過去問を「分析」する
ただ解くのではなく、「この問題は何を試しているのか」を考えるようにしました。
IBの数学は出題パターンがあります。過去問を5年分くらいやると、よく聞かれるテーマが見えてきます。例えば:
- Paper 1では関数の変換と微分の融合問題がほぼ毎年出る
- Paper 2では確率分布と統計的推定の問題が頻出
- Paper 3(HL)では証明問題が定番
先生が「この問題は微分と最適化の融合だよ」「こっちは三角法と座標幾何の組み合わせ」みたいに、問題の構造を教えてくれたのが大きかった。問題の「型」がわかると、似た問題が出たときに対応できるようになります。
具体的な勉強法の変化
Before(成績が落ちていた頃)
- 教科書を読んで理解した「つもり」になる
- 練習問題を解いて、間違えたら答えを見て「なるほど」で終わり
- テスト前に一夜漬け
- わからない問題は飛ばす
After(成績が上がり始めた頃)
- 教科書の概念を「自分の言葉で」説明できるか確認する
- 間違えた問題は、なぜ間違えたかを分析してノートにまとめる
- 毎日30分ずつコツコツ積み上げる
- わからない問題は先生に質問する(次の授業まで放置しない)
特に「間違えた問題の分析」が効果的でした。同じ間違いを繰り返すパターンが見えてくるんです。「あ、自分は符号のミスが多い」「積分の定数を忘れがち」みたいに。弱点がわかれば、そこを重点的に練習できます。
IAへの取り組み方も変わった
数学のInternal Assessment(IA)は、自分でテーマを選んで数学的な探究を行うレポートです。成績が低迷していた頃は、IAも「とりあえず何か書けばいい」と思っていました。
でも基礎力がついてくると、「この数学的概念を使って、こんなことが分析できるんじゃないか」と自分で考えられるようになりました。私のIAでは、バスケットボールのフリースローの軌道を二次関数でモデル化して、最適な角度と速度を求めるというテーマを選びました。
好きなスポーツと数学をつなげられたことで、IAの執筆が楽しくなりました。先生にも「あなたらしいテーマで、数学的な深さもある」と評価してもらえました。
結果はどうなった?
DP2年目の最初のテストで6を取りました。最終的にはIBの試験本番でも6。7には届かなかったけど、4から6への回復は自分にとっては大きな成功でした。
何より、「数学がわかる」という感覚を取り戻せたのが嬉しかった。テストの点数以上に、数学に対する苦手意識がなくなったことが、一番の収穫だと思っています。
数学で苦しんでいるIB生へ
もし今、数学の成績が落ちて焦っているなら、伝えたいことがあります。
- 成績が下がったのは能力の問題じゃない。 基礎のどこかに穴があるだけ。その穴を見つけて埋めれば、必ず回復できる
- 一人で悩む時間が長いほど、穴は広がる。 早めに誰かに相談しよう。先生でも、塾でも、IBの経験者でもいい
- HLからSLに下げるのは最終手段。 まずは基礎の見直しから。SLに下げると大学の選択肢が狭まることもある
- 過去問は「解く」だけじゃなく「分析」する。 パターンが見えると一気に楽になる
- 毎日少しずつの方が、テスト前の一夜漬けより効果がある。 数学は積み重ねの科目
保護者の方へ
お子さんの数学の成績が急に下がった場合、MYPからDPへの移行で躓いている可能性が高いです。「なんで急にできなくなったの?」と責めるのではなく、「DPの数学はMYPとは難しさの質が違うんだね」と理解してあげてください。
そして、できるだけ早くサポートを入れることをおすすめします。数学は積み上げの科目なので、わからない部分を放置すると、その上に積み上がる内容が全てわからなくなってしまいます。
IBの数学は確かに難しいです。でも、正しいやり方で取り組めば、必ず伸びます。私がそうだったから。
Math AAの具体的な対策方法は、IB Math AA完全攻略ガイドにまとめています。