「DPってMYPの延長でしょ?」
MYPの最後にそう思っていた私は、DPが始まって1週間で考えを改めました。MYPとDPは、同じIBでも全く別の世界です。これからDPに上がる人に向けて、最初の1ヶ月をどう乗り越えたか、具体的に書いていきます。
MYPとDPの根本的な違い
まず前提として、MYPとDPの仕組みの違いを整理しておきます。MYPは8つの教科グループをバランスよく学ぶカリキュラムで、評価も各教科の4つの規準(Criteria A-D)に基づいています。成績は1-7のスケールで、規準ごとの達成度が総合的に反映されます。MYPの全体像についてはIB MYP完全ガイドも参考にしてください。
DPでは6科目を選択し、それぞれHL(Higher Level)かSL(Standard Level)を決めます。さらにTOK、EE、CASという「コア」が加わる。評価方法もIA(Internal Assessment)と最終試験(External Assessment)に分かれていて、MYPの評価とは全く異なるシステムです。
この構造の違いが、最初の1ヶ月の戸惑いの原因になります。科目選択について詳しくはDP科目選びガイドを参考にしてください。
最初の1週間で感じた3つのギャップ
1. 授業のスピードが違う
MYPでは先生が丁寧に説明してくれて、わからないことがあれば授業中に質問できる雰囲気がありました。DPでは、ある程度の予備知識がある前提で授業が進みます。
特にHL科目は、最初の授業から「これ、もうやってる前提?」と思うことが何度もありました。例えばHL Chemistryの初回授業で、先生が「MYPでstoichiometryはやったよね」と言って、いきなりモル計算の応用に入った。MYPでは概念的な理解が中心だったので、計算の正確さを求められるDPのレベルに面食らいました。
HL Historyも同様で、最初の週から一次資料の分析が課題として出ました。MYPでは「歴史的な出来事を調べてまとめる」が中心だったのに、DPでは「この史料の信頼性を評価せよ」「著者のバイアスを指摘せよ」と問われる。求められるスキルが一段上がった感覚です。
2. 課題の質が変わる
MYPの課題は「調べてまとめる」が中心でした。DPの課題は「自分の意見を根拠を持って主張する」ことが求められます。レポート一つとっても、「参考文献を正しく引用しているか」「反対意見も考慮しているか」「議論の論理構成は妥当か」がチェックされます。
最初のエッセイを出したとき、MYPでは7をもらえていたレベルの内容で5が返ってきて、ショックを受けました。先生のフィードバックには「主張はあるが、根拠が弱い。反論への対応がない」と書いてありました。MYPでは「自分の意見を書く」だけでよかったのに、DPでは「自分の意見を守る」力が必要なんだと痛感しました。
特にEnglish A(Language and Literature)のテキスト分析は、MYPとのギャップが大きかった。MYPでは作品の感想や要約で成績が取れていたのに、DPでは文体分析(stylistic analysis)や修辞技法(rhetorical devices)の特定が求められる。最初の数週間は、何をどう書けばいいのか本当にわかりませんでした。
3. 自己管理の比重が増える
MYPでは先生が締め切りをリマインドしてくれたり、課題の進捗を確認してくれたりしました。DPでは基本的に自分で管理します。6科目の課題に加えて、TOK、EE、CASの計画も自分で立てないといけない。
「誰も言ってくれないから、気づいたら締め切り前日」という経験を、最初の1ヶ月で2回しました。1回目はSL Mathの小テストの範囲を把握していなくて、2回目はHL Biologyのラボレポートの提出日を1日間違えた。どちらも自己管理の甘さが原因です。
DPでは一つの科目で複数の課題が同時に走ります。HL科目のIA準備、SL科目の単元テスト、TOKのジャーナル、CASのリフレクション。これらを全て把握して、優先順位をつけて進める力が求められます。時間管理について詳しくはDP時間管理術の記事も参考にしてください。
最初の1ヶ月で見落としがちなこと
TOKの重要性を軽視する
最初の1ヶ月、TOKの授業は「よくわからない哲学の話」に感じるかもしれません。私も正直、最初は「これ何の役に立つの?」と思っていました。でも、TOKは最大3点のボーナスポイントに関わる。EEとの組み合わせで合計3点が決まるので、最終スコアに直結します。
TOKの評価エッセイとプレゼンテーションは、DP2年目に本格化しますが、1年目からの積み重ねが大きく影響します。授業で扱う「知識の問い(Knowledge Questions)」に真剣に向き合っておくと、2年目が楽になります。TOKの攻略法も読んでおくといいですよ。
EEを後回しにする
「EEはYear 2で書けばいい」と思うかもしれませんが、テーマ選びとリサーチはYear 1から始まります。多くの学校ではYear 1の後半にEEのテーマを決めて、担当教員(Supervisor)を割り当てます。
最初の1ヶ月の段階では、EEのことは考えなくてもいいですが、各科目の授業を受けながら「この分野、もっと深く調べたいな」という感覚を大事にしておくと、テーマ選びの助けになります。
CASの記録を溜め込む
CASは活動自体も大切ですが、リフレクション(振り返り)の記録が重要です。最初の1ヶ月は新生活に慣れるのに精一杯で、CASの記録を後回しにしがちです。でも、1ヶ月分のリフレクションを後からまとめて書くのはかなり大変。週に1回、10分だけでもリフレクションを書く習慣をつけておくことをおすすめします。
私が1ヶ月目に始めたこと
手帳を買った
デジタルよりもアナログ派でした。全科目の課題と締め切りを一覧できる手帳を買って、毎日確認する習慣をつけました。今思えば、これが一番効果があった。
具体的には、見開きの左ページにその週の課題一覧、右ページに日ごとのスケジュールを書く形にしました。毎週日曜の夜に翌週の予定を書き出して、毎朝5分で当日のタスクを確認する。このルーティンのおかげで、2回目以降の締め切り忘れはゼロになりました。
勉強仲間を作った
同じHL科目を取っている友達と、週に1回一緒に勉強する時間を作りました。「あの課題、もうやった?」「あの授業の意味わかった?」と情報交換するだけで、取りこぼしが減ります。
特に効果があったのは、お互いのエッセイを読み合うこと。自分では気づかない論理の飛躍や、わかりにくい表現を指摘してもらえるし、他の人のエッセイを読むことで「こういう書き方もあるんだ」と学べます。
先生に質問する習慣
MYPでは授業中に質問していたけど、DPでは授業後やメールで個別に質問するようにしました。先生も「聞いてくれたら答えるけど、聞かなかったら進むよ」というスタンスなので、自分から動くのが大事です。
最初の1ヶ月は、毎週最低1回は各HL科目の先生に質問しに行くと決めていました。質問する内容は、授業でわからなかったことだけでなく、「この単元はIAのテーマにできますか?」「この参考書はおすすめですか?」といったことも。先生との関係を早い段階で築いておくと、後のIA指導やEEのアドバイスでも助けてもらいやすくなります。
MYPの復習を並行した
DPの授業についていくために、MYPの内容を復習し直しました。特に数学と理科系のHL科目は、MYPで習った基礎が曖昧だとDPの内容が理解できません。最初の2週間は、毎日30分だけMYPのノートを見返す時間を取りました。
保護者の方へ: DPの最初の1ヶ月をどう見守るか
成績の一時的な下落は想定内
お子さんがDPに上がったばかりで「大変そう」に見えたら、それは正常です。MYPからDPへの移行は、IBの中でも一番大きなギャップです。
最初の1-2ヶ月は成績が下がることもあります。でも、それは能力の問題ではなく、新しい環境への適応期間です。「前は7だったのに、なんで5なの?」と責めるのではなく、「DPは評価基準が違うんだね」と理解してあげてください。
科目選択の見直しも選択肢
多くの学校では、DPの最初の数週間に科目変更が可能です。お子さんが「この科目はレベルが合わない」「やってみたら興味がなかった」と感じている場合は、早めに先生やコーディネーターに相談するよう促してあげてください。HLからSLへの変更、またはその逆も、最初の1ヶ月以内なら対応してもらえることが多いです。
睡眠時間と体調管理に目を配る
DPの最初は頑張りすぎて睡眠を削るお子さんが多いです。でも、睡眠不足は集中力と記憶力の低下に直結します。最低6時間、できれば7時間の睡眠を確保できているか、さりげなく確認してあげてください。
早めのサポートが効果的
もし1学期目が終わっても改善が見られない場合は、早めにサポートを考えてもいいかもしれません。IBの経験者に相談すると、的確なアドバイスがもらえます。DPの最初に躓くポイントは共通しているので、経験者のサポートで一気に軌道に乗ることも多いです。
DP Year 1でよくあるミスの記事も、保護者の方にぜひ読んでいただきたいです。
まとめ: DPは最初が一番きつい
これだけは覚えておいてほしいです。DPは最初の1-2ヶ月が一番きつい。でも、そこを乗り越えると、自分のペースが掴めてきます。
最初の1ヶ月を乗り越えるためのポイントをまとめます。
- 手帳やアプリで全科目の課題と締め切りを一元管理する
- 同じ科目を取っている友達と勉強仲間を作る
- 先生に自分から質問する習慣をつける
- MYPの基礎があいまいな部分は早めに復習する
- TOKとCASを後回しにしない
- 成績が下がっても焦らない。適応期間として受け入れる
「MYPに戻りたい」と思う気持ちはよくわかります。でも、DPで身につく力は、大学でもその先でも必ず役に立ちます。最初の壁を越えた先に、もっと面白い世界が待っています。