中学2年生のとき、一般の公立中学校からIB校に転校しました。親の仕事の関係で海外に行くことになり、現地のインターナショナルスクールでMYPに編入したんです。

最初の3ヶ月は、正直「戻りたい」と毎日思っていました。でも今振り返ると、あの転校は人生のターニングポイントでした。IB校への途中編入を考えている方に向けて、リアルな体験を全部書きます。

転校初日の衝撃

授業が全部英語という現実

授業が全部英語。当たり前なんですけど、頭ではわかっていても、実際に教室に座ると全然違いました。先生の英語は比較的ゆっくりで聞き取れるけど、クラスメートの会話のスピードについていけない。「Hey, did you do the homework?」くらいは聞き取れても、3人以上で会話が始まるとスピードが一気に上がって、何を話しているのかわからなくなる。

授業で手を挙げる余裕なんてありませんでした。先生が質問を投げかけても、質問の意味を理解する頃には誰かがもう答えている。最初の1週間は、授業中ずっと「わからない」「ついていけない」という状態でした。

IBの授業スタイルは日本と全く違う

しかも、IBの授業スタイルは日本の学校とは全く違う。日本では先生が黒板に書いて、生徒がノートを取る。正解を覚えて、テストで書く。IBでは、先生が一方的に教えるのではなく、生徒同士でディスカッションしたり、グループワークしたり。「自分の意見を言え」と求められることに、最初は戸惑いました。

日本の学校では「正解を出す」ことが評価されますが、IBでは「考えるプロセス」が重視される。先生に「なぜそう思うの?」と聞かれて、「教科書に書いてあったから」と答えたら、「じゃあ、あなた自身はどう思うの?」と返された。この違いに慣れるまで、1ヶ月以上かかりました。

一番辛かったこと

孤独感との戦い

成績よりも辛かったのは、孤独感です。昼休みに一人でご飯を食べる日が続きました。周りは小学校から一緒のメンバーで、すでにグループが出来上がっている。途中から入った私には、どこに入ればいいかわからなかった。

カフェテリアで一人で食べるのが辛くて、図書室で食べるようになりました。「本を読んでるから一人なんだ」と自分に言い聞かせていたけど、本当は寂しかった。

「ここでやっていけるのかな」と、母に泣きながら電話したことを覚えています。母は「3ヶ月だけ頑張ってみよう。3ヶ月後にまだ辛かったら、一緒に考えよう」と言ってくれました。この言葉のおかげで、「とりあえず3ヶ月」と思えたのが大きかったです。

言葉の壁がコミュニケーションを阻む

英語力の問題は、勉強だけでなく人間関係にも影響しました。冗談が理解できない。言いたいことが英語で出てこない。グループワークで意見を求められても、考えをまとめる前にディスカッションが先に進んでしまう。

「あの子、何も喋らないよね」と言われているのを聞いたとき、悔しくて泣きました。喋りたくないんじゃない、喋れないだけなんだ、と。

転機は「数学」だった

日本の数学教育が武器になった

英語では苦労していた私ですが、数学だけは違いました。日本の中学で習っていた内容が、MYPの数学ではまだ扱われていなかったんです。日本の数学教育はカリキュラムの進度が速いので、二次方程式や三角比など、同学年のMYPの生徒がまだ習っていない内容を私はすでに知っていました。

数学の授業で初めて手を挙げて答えたとき、クラスメートが「すごい、どうやって解いたの?」と聞いてきました。英語はたどたどしかったけど、ホワイトボードに計算過程を書いて説明した。その日から、「数学が得意な日本人」として認識されるようになりました。

助け合いの関係が生まれた

そこから少しずつ、友達ができ始めました。数学を教えてあげる代わりに、英語のエッセイの書き方を教えてもらう。Science のラボレポートの英語表現をチェックしてもらう代わりに、数学の宿題を一緒にやる。自然な助け合いが生まれました。

一方的に助けてもらうのではなく、自分も何かを提供できるという関係が、自信の回復につながりました。「英語はまだダメだけど、数学なら役に立てる」。この感覚が、転校後の精神的な支えでした。

英語力はどうやって伸ばしたか

4つの具体的な方法

英語力を上げるために、意識的に取り組んだことが4つあります。

  1. 授業の後に、その日のノートを英語で書き直す。 授業中は理解することに集中して、メモは日本語と英語が混ざった状態。帰宅後に、全部英語に書き直す作業を毎日やりました。これが語彙力とアカデミック英語のトレーニングになった

  2. 英語の本を1日30分読む。 最初は絵本レベルからスタート。恥ずかしいとか言ってる場合じゃなかった。2ヶ月目からはYoung Adult向けの小説に移行して、3ヶ月目にはHarry Potterを原書で読めるようになりました

  3. 友達との会話を録音して、聞き返す。 恥ずかしいけど効果があった。自分の英語を客観的に聞くことで、発音のクセや文法ミスに気づけた。「あ、ここで前置詞を間違えてるな」とか

  4. わからない単語は恥ずかしがらずに「それどういう意味?」と聞く。 最初は聞くこと自体が恥ずかしかったけど、聞かないとわからないまま。クラスメートも嫌な顔せず教えてくれた

英語力の成長タイムライン

半年くらいで日常会話は問題なくなりました。友達とカフェテリアで笑いながら話せるようになったとき、本当に嬉しかった。学術的な英語がスムーズになるまでには1年以上かかりましたが、IBの環境にいると嫌でも英語に触れるので、自然と伸びていきます。

1年半後にはエッセイでクラスの平均以上の成績を取れるようになり、2年後にはTOKのプレゼンテーションを英語で堂々とできるようになりました。最初の「何も喋れない」状態からここまで来られたことが、今でも自分の自信になっています。

IBの授業スタイルに慣れるまで

「正解がない問題」への適応

日本の学校では「正解を出す」ことが求められますが、IBでは「自分の考えを持つ」ことが重要。この切り替えに時間がかかりました。

特に「正解がない問題」に最初は困惑しました。Humanities(人文科学)の授業で「植民地主義は現代社会にどう影響しているか?」と聞かれても、正解がない。先生は特定の答えを期待しているわけではなく、「自分なりの視点で論じる力」を見ている。

先生が「間違いを恐れないで。大切なのはプロセスだよ」と何度も言ってくれたおかげで、少しずつ自分の意見を言えるようになりました。「間違っていても、考えを表明すること自体に価値がある」と理解できたとき、IBの授業が一気に面白くなりました。

MYPの評価方法に慣れる

日本のテストは「知識の量」を測るものでしたが、MYPの評価は4つの規準(Criteria A-D)に基づいています。例えばScience なら、Knowing and Understanding(知識と理解)、Inquiring and Designing(探究とデザイン)、Processing and Evaluating(処理と評価)、Reflecting on the Impacts of Science(科学の影響の振り返り)。

単に知識を覚えるだけではなく、実験をデザインしたり、結果を評価したり、科学が社会に与える影響を考えたりすることが求められる。この多面的な評価に慣れるまで、半年くらいかかりました。

転校してよかったこと

辛い話を多く書きましたが、転校してよかったことも書いておきます。

視野が圧倒的に広がった

インターナショナルスクールには、20以上の国籍の生徒がいました。日本の公立中学にいたら出会えなかった人たちと毎日一緒に過ごすことで、世界の広さを実感しました。「普通」が国によって全く違うこと、「当たり前」は存在しないことを、身をもって学びました。

自分で考える力がついた

IBの教育を受けたことで、「言われたことをやる」から「自分で考えて行動する」に変わりました。これはDPに進んでからも、大学でも、社会に出てからもずっと役に立つスキルです。

英語力という財産

辛い思いをして身につけた英語力は、人生の大きな財産になりました。DPでは英語で全ての科目を受験し、海外大学への進学も選択肢に入った。日本にいたままでは、この選択肢は持てなかったと思います。

転校を考えている保護者の方へ

最初の3ヶ月は辛い時期がくる

お子さんがIB校への転校を控えているなら、最初の3ヶ月は辛い時期が来ると思ってください。成績が下がるのは普通です。友達ができるまでに時間がかかるのも普通です。お子さんが泣いて電話してくることもあるかもしれません。

小さな成功を見逃さない

大切なのは、お子さんの小さな成功を見逃さないこと。「今日、授業で発言できた」「友達とお昼を食べた」「先生に英語で質問できた」。そういう一つ一つが、大きな成長です。「すごいじゃん!」と一緒に喜んであげてください。

「戻りたい」と言われたら

お子さんが「日本に帰りたい」と言ったとき、すぐに「だめ」と否定するのではなく、まず気持ちを受け止めてあげてください。その上で、「もう少しだけ頑張ってみよう」と期限を区切って提案する。私の母がしてくれた「3ヶ月だけ」は、本当に救いになりました。

英語力と学力は必ず追いつく

英語力や学力は必ず追いつきます。IBの環境は、子どもの適応力を信じられないくらい引き出してくれます。特に中学生の吸収力は大人の想像を超えています。半年後、1年後のお子さんの成長に、きっと驚くはずです。

学校との連携を大切に

転校後、担任やIBコーディネーターとの連絡を密にしておくと安心です。多くのIB校には、途中編入の生徒向けのサポート体制があります。英語のサポートクラス(EAL: English as an Additional Language)が用意されている学校も多いので、積極的に活用してください。

IB校の選び方についてはIB校の選び方ガイドも参考にしてください。

まとめ

IB校への途中編入は、間違いなく大きなチャレンジです。言語の壁、授業スタイルの違い、孤独感。最初の数ヶ月は辛いことの方が多いかもしれません。

でも、そのチャレンジを乗り越えた先には、かけがえのない経験と成長が待っています。

  • 英語力は半年で日常会話レベル、1年半で学術レベルに到達できる
  • 数学など日本の教育で先行している科目が、最初の武器になる
  • 助け合いの関係から自然に友達ができていく
  • 「自分の意見を持つ」というIBの学びは、一生ものの力になる
  • 保護者のサポート、特に「小さな成功を一緒に喜ぶ」ことが子どもの支えになる

私自身、あの転校がなかったら、今の自分はいません。辛かったけど、人生で一番成長できた経験でした。もし今、IB校への転校を迷っているなら、「飛び込んでみる」ことをおすすめします。きっと想像以上の自分に出会えるはずです。

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