IB 新課程の変更は2024年以降、ほぼすべての主要科目で順次実施されています。Business Managementは2024年初回試験、Biology・Chemistry・Physicsは2025年初回試験、そしてMathematics・Computer Science・Extended Essayは2027年初回試験と、時期が科目ごとにずれているため、いま高校で選択科目を考えている生徒と保護者の方は「自分の学年はどのシラバスで受験するのか」を正確に把握しておく必要があります。この記事では、IB新カリキュラムの科目別変更点を、IB公式情報にもとづいて整理します。

目次

  • IB新カリキュラムの全体像(初回試験年マトリクス)
  • Biology 新課程(first assessment 2025)
  • Chemistry 新課程(first assessment 2025)
  • Physics 新課程(first assessment 2025)
  • Business Management 新課程(first assessment 2024)
  • Mathematics 新課程(first assessment 2027)
  • Computer Science 新課程(first assessment 2027)
  • DPコア(TOK・Extended Essay・CAS)の変更
  • Language A(言語と文学)の変更
  • 新課程で受験する生徒・保護者が今やるべきこと
  • FAQ(よくある質問)

IB新カリキュラムの全体像(初回試験年マトリクス)

まず、どの科目がいつ新課程に切り替わるのかを一覧で確認します。「初回試験年(first assessment)」は、新シラバスで初めて試験が実施される年、「初回授業年(first teaching)」は、その学年が高1(DP1)で授業を開始する年を指します。

科目初回授業年初回試験年
Business Management2022年8月2024年5月
Biology(SL/HL)2023年8月2025年5月
Chemistry(SL/HL)2023年8月2025年5月
Physics(SL/HL)2023年8月2025年5月
Mathematics: Analysis and Approaches2025年8月2027年5月
Mathematics: Applications and Interpretation2025年8月2027年5月
Computer Science2025年8月2027年5月
Extended Essay(新ガイド)2025年8月2027年5月
TOK(前回改訂)2020年8月2022年5月
Language A: Language and Literature / Literature2019年8月2021年5月

重要なポイントは「2026年5月試験」と「2027年5月試験」の境目です。Mathematics・Computer Science・Extended Essayは、2025年8月に高1(DP1)を始めた学年から新シラバスの対象になり、2027年5月が初回試験となります。2026年5月試験の受験者は旧課程での受験になるため、参考書や過去問の選び方にも注意が必要です。

Biology 新課程(first assessment 2025)

構造の変更点

Biologyの新課程は、コンテンツの大幅な再編成が行われました。旧課程は11トピックで構成されていましたが、新課程は4つの大きなテーマ(Themes)と、それぞれに2つのコンセプトを組み合わせた構造になっています。4つのテーマは以下のとおりです。

  • Theme A: Unity and diversity(統一性と多様性)
  • Theme B: Form and function(形態と機能)
  • Theme C: Interaction and interdependence(相互作用と相互依存)
  • Theme D: Continuity and change(連続性と変化)

これらに加えて、4つの「levels of organization(組織レベル)」として、分子(molecules)・細胞(cells)・生物個体(organisms)・生態系(ecosystems)という軸が重ねられ、知識を立体的に整理できる構造になっています。

授業時間と履修時間

公式の授業時間はSLが150時間、HLが240時間で、これは旧課程から変わっていません。ただし、旧課程にあった「オプション(選択トピック)」が廃止され、オプション分の時間(SL15時間、HL25時間)がコアに統合されたため、全体として学ぶ内容は「幅広く・浅く」から「少し絞って・深く」へとシフトしました。

Internal Assessment(IA)の変更

Biologyを含む3科目(Biology/Chemistry/Physics)のIAは「Scientific Investigation(科学的探究)」と呼ばれる形式に統一されました。主な特徴は以下です。

  • 最大3,000語のレポート(グラフ・表・方程式・引用・付録は文字数に含めない)
  • 評価基準は「Research design」「Data analysis」「Conclusion」「Evaluation」の4項目
  • ConclusionとEvaluationの配点が合計50%を占める構成に変更され、高次思考力(higher-order thinking)がより強く問われる
  • 小グループでの探究活動も許容される(最終レポートは個人執筆)

試験の変更

外部試験はPaper 1とPaper 2の2つに整理されました。Paper 1は多肢選択問題とデータ分析問題、Paper 2は短答式と長文記述問題という構成です。旧課程のPaper 3(オプション)は廃止されています。

Chemistry 新課程(first assessment 2025)

構造の変更点

Chemistryはさらに大胆な再構成が行われ、コンテンツ全体を2つの大きなコンセプトに集約しました。

  • Structure(構造)
  • Reactivity(反応性)

この2つは「Structureがreactivityを決定し、reactivityがstructureを変化させる」という相互関係として結ばれており、個別の暗記事項ではなく「なぜそうなるのか」の原理を軸に学ぶ設計になっています。

オプション廃止

旧課程の4つのオプション(Materials、Biochemistry、Energy、Medicinal Chemistry)は廃止され、一部の内容がSL/HL本体に統合されました。その結果、受験生全員が同じ内容で勉強するため、学校間・生徒間での「有利なオプションを選ぶ」といった戦略は使えなくなりました。

試験の変更

外部試験はBiologyと同じく2つに整理されています。Paper 1はPaper 1A(多肢選択問題)とPaper 1B(データ分析問題)の2部構成、Paper 2は短答式と長文記述問題です。

IA

ChemistryのIAもScientific Investigation形式(最大3,000語)で、Biology・Physicsと共通のフォーマットになっています。

Physics 新課程(first assessment 2025)

構造の変更点

Physicsは旧課程の8トピック構成から、5つのテーマにシラバスが再編されました。

  • Theme A: Space, time and motion(空間・時間・運動)
  • Theme B: The particulate nature of matter(物質の粒子性)
  • Theme C: Wave behaviour(波動)
  • Theme D: Fields(場)
  • Theme E: Nuclear and quantum physics(原子核・量子物理)

テーマ構造にしたことで、力学・熱・波・電磁気・量子といった分野を横断する「場(field)」や「エネルギー」の概念が一貫して使えるようになり、より深い概念理解を目指す設計です。

試験・IA

外部試験の構造はPaper 1(Paper 1A+Paper 1B)とPaper 2の2つ、IAはBiology・Chemistryと同じScientific Investigation形式(最大3,000語)で統一されています。

Nature of Science

Biology、Chemistry、Physics、さらに新しくDPに加わったSports, Exercise and Health Scienceを含めた理科4科目に、「Nature of Science(科学の本質)」という共通のテーマが設けられました。科学的知識がどのように構築・検証・修正されるのか、科学と社会の関係をどう捉えるのかを、全科目で意識的に扱います。

Business Management 新課程(first assessment 2024)

Business Managementの新課程は2022年8月に授業が始まり、2024年5月が初回試験でした。すでに受験が行われている科目ですが、現在のDP1・DP2生にとっては依然として「新しい」シラバスなので変更点を押さえておきます。

Key Concepts(主要概念)の削減

旧課程の6つのキーコンセプトは、以下の4つに整理されました。

  • Change(変化)
  • Ethics(倫理)
  • Sustainability(持続可能性)
  • Creativity(創造性)

Internal Assessmentの統一

SLとHLのIAが同じ課題・同じ採点基準に統一されました。現実の企業が直面している問題や課題を、4つのキーコンセプトのうち1つを軸に分析し、3〜5点の裏付け資料(supporting documents)に基づいて1,800語以内でレポートにまとめる形式です。

Business Management Toolkit

新課程では「Business Management Toolkit」と呼ばれる15の理論・分析手法(SWOT、PESTLE、Ansoff Matrix、BCG Matrix、Lewin’s Force Field Analysisなど)が明文化され、IA・外部試験・EEのすべてで活用することが求められています。

Paper 1の統一

Paper 1はSL・HL共通の問題になり、事前配布されるpre-released case studyの一部(extract+topicsの一覧)をもとに出題される形式に変わりました。

Mathematics 新課程(first assessment 2027)

2科目構成は維持

Mathematicsは現行と同じ「Analysis and Approaches(AA)」と「Applications and Interpretation(AI)」の2科目構成で、それぞれSLとHLがあります。新課程は「大幅な刷新ではなく改良(refinement rather than reinvention)」という方針で、指導者・生徒が既存の教材や指導法を大きく変える必要はない設計です。

5つのトピックは共通

旧課程と同じく以下の5トピックで構成されます。

  • Number and Algebra(数と代数)
  • Functions(関数)
  • Geometry and Trigonometry(幾何と三角法)
  • Statistics and Probability(統計と確率)
  • Calculus(微分積分)

SLの内容はHLのサブセット、またAAとAIの共通部分は各トピックの冒頭にまとめられており、科目選択変更時の移行や比較がしやすい構成です。

重視されるスキル

新Mathematicsシラバスは、以下のスキルを明確に育成目標に据えています。

  • 分析(analysis)と抽象化(abstraction)、一般化(generalisation)
  • リスク認識と統計リテラシー(risk awareness and statistical literacy)
  • アルゴリズム的思考(algorithmic thinking)
  • モデリングと探究(modelling and inquiry)

特にアルゴリズム的思考は、Computer Scienceの新課程とも連動するテーマで、今後の大学進学・社会で求められるデジタル時代の思考様式を強く意識しています。

移行期間

2025年8月に高1(DP1)となる学年から新シラバスの対象です。そのため、2026年5月試験までは旧課程、2027年5月試験から新課程と、1年間の移行期間(transition period)が設けられています。

Computer Science 新課程(first assessment 2027)

Computer Scienceは2014年シラバスを長く使っていましたが、2025年2月に新ガイドが発表され、2025年8月の初回授業、2027年5月の初回試験で刷新されます。変更点は理数系のなかで最も大きいレベルです。

オプションとPaper 3の廃止

旧課程にあった4つのオプション(Database、Modelling and Simulation、Web Science、OOP)とHL専用のPaper 3は廃止されました。かわりに、DatabasesとObject-Oriented Programming(OOP)がSL・HL両方のコア内容として組み込まれています。

Case Studyの位置づけ変更

旧課程ではHLのみの要素だったCase Studyが、新課程ではPaper 1の一部としてSL・HL両方で出題されます。

機械学習の導入

新カリキュラムの目玉の一つが「Machine Learning」の導入です。AIの基礎概念、アルゴリズムの学習原理、データに基づく意思決定の仕組みをDPレベルで扱うようになり、現代のテクノロジー環境を反映した内容にアップデートされました。

プログラミング言語はJavaまたはPython

新シラバスはJavaとPythonの両方に対応しており、受験生はどちらかを選んで学習できます。旧課程がJava中心だったのと比べると、Pythonコミュニティが大きい現在の学習環境に合わせた柔軟な設計です。

Internal Assessment

IAは従来どおり「Computational Solution(計算的問題解決)」の形式ですが、プロセス重視、特にComputational Thinking(計算論的思考)のプロセスの記述がより強く問われるようになりました。

DPコア(TOK・Extended Essay・CAS)の変更

TOK(first assessment 2022)

TOKは2020年8月の授業開始・2022年5月初回試験で刷新されており、現行のDP生にとってはすでに「新TOK」が標準です。主な変更点は以下です。

  • 旧課程の「プレゼンテーション(presentation)」は廃止され、新しい「TOK Exhibition(展示)」に置き換わった
  • Exhibitionは、IA Prompts(35の指定プロンプト)のいずれか1つを選び、3つのオブジェクトを選んで合計950語以内のコメンタリーを書く形式
  • Essayは1,600語以内で、IBから指定されたPrescribed Titles(6つの論題から1つ選択)に対して論じる
  • 評価比重はExhibitionとEssayがそれぞれ33%と67%(Essayの方が重い)

Extended Essay(first assessment 2027)

EEは2025年8月開始、2027年5月試験の新ガイドで大きく刷新されます。

  • Reflections on Planning and Progress Form(RPPF)は最終viva voce後に提出する500語の単一のリフレクションに簡素化
  • Criterion E(Reflection)の配点は従来の6点から4点に引き下げ
  • ただし、質的には「学習者としての成長(growth of the learner)」「ATLスキルの発達」をより明確に記述することが求められる
  • リフレクションセッションは従来どおり3回(最終のvivaを含む)

研究プロセスとATLスキルの可視化が強化され、「何を書いたか」より「どう成長したか」を伝える力が問われます。

CAS

CASのフレームワーク自体(Creativity/Activity/Service、7 Learning Outcomes、CAS Project、CAS Portfolio)は大きく変わっていません。ただし、理科・数学などの新シラバスと連動して、CASで扱うテーマに「持続可能性」「デジタルシチズンシップ」「Global Engagement」が自然と組み込まれやすくなっています。

Language A(言語と文学)の変更

Language A(Literature/Language and Literature)は2019年8月開始、2021年5月初回試験で刷新された内容が、現在のDP生が学んでいる「新課程」です。主な変更点を押さえておきます。

コンセプト中心の設計

新課程は7つのCentral Concepts(Identity、Culture、Creativity、Communication、Perspective、Transformation、Representation)を軸にした設計で、作品を単独で読むのではなく、概念横断で文学・非文学テクストを分析する力が問われます。

Prescribed Reading Listの刷新

指定作品リストが刷新され、教師と生徒のコース設計の自由度が増えました。多文化・多言語の作品が積極的に採用されています。

Learner Portfolio

Learner Portfolio(学習者ポートフォリオ)がコースに明示的に組み込まれました。IB本部による採点・モデレーションの対象ではありませんが、全コースの橋渡しとして必須要素に位置づけられています。

新課程で受験する生徒・保護者が今やるべきこと

新カリキュラムへの切り替え期は、情報の取り違えや古い教材の使用によって学習効率が大きく下がりやすい時期です。IBTでは以下の3点を推奨します。

1. 自分の初回試験年を特定する

2025年5月試験なら理科3科目は新課程、Math・Compsci・EEは旧課程、というように科目ごとにシラバスが異なります。学校のDPコーディネーターに確認し、自分の受験年度に対応したシラバスを明確に把握しましょう。

2. 新課程対応の教材・過去問を使う

特に理科3科目の2025年試験以降は、旧課程の過去問(Paper 3を含む)をそのまま使うと、形式もトピック範囲もずれているため効果が薄くなります。公式の「Sample Exam Papers」と新シラバス対応のスタディガイドを優先しましょう。

3. IA・EEは新ガイドに従う

BiologyのIAなら「Scientific Investigation」、Business ManagementのIAなら「4コンセプトいずれか1つ+1,800語制限」、EEはRPPFの新フォーマットなど、各コンポーネントで評価基準が変わっています。学校の指導と合わせて、最新の公式ガイドを直接参照することをおすすめします。

IBTでは、IB卒業生のチューターが科目別に新課程のシラバスを熟読したうえで、個別指導・IA添削・EE指導を提供しています。新カリキュラムに不安がある方は、お気軽にご相談ください。

FAQ(よくある質問)

Q1. 自分の学年は新課程と旧課程のどちらで受験しますか?

2024年5月試験以前にDPを卒業した方は、理科・Math・CompsciすべてについてほぼBusiness Management以外は旧課程で受験済みです。2025年5月試験で卒業する方は、Biology・Chemistry・Physicsは新課程、Math・Compsciは旧課程です。2026年5月試験の方は、理科3科目+Business Managementが新課程、Math・Compsci・EEは旧課程です。2027年5月試験の方は、すべての主要科目で新課程となります。

Q2. 新課程のほうが難しくなっていますか?

難易度が「高くなった」というより、「思考の深さ」と「概念理解」を重視する設計にシフトしています。理科3科目ではオプションがなくなった分、コアを深く掘り下げる必要があり、暗記だけで乗り切る戦略が通用しにくくなりました。一方で、Mathは大幅な刷新ではなく改良にとどまるため、既存の学習計画を大きく変える必要はありません。

Q3. 旧課程の過去問は新課程の対策に使えますか?

範囲が重なる部分は一定の練習価値があります。ただし、Paper 3が廃止された科目(理科3科目、Computer Science)ではPaper 3の過去問はほぼ使えません。またChemistryのオプション範囲(Biochemistry、Medicinal Chemistryなど)、Biologyの一部トピックは新課程の範囲外になっているため、注意が必要です。公式の「Specimen Papers(見本問題)」が公開されている科目は、まずそちらを優先してください。

Q4. 新Math AAとAIはどちらを選ぶべきですか?

AAは理論・証明・抽象思考を重視し、理工系・経済学・数学系の大学進学に適しています。AIは統計・モデリング・実社会応用を重視し、ビジネス・心理学・社会科学・デザイン系の進学に適しています。新課程でもこの選択軸は変わっていません。志望学部のMath要件と、自分の得意なスキル(抽象 vs 応用)を基準に判断しましょう。

Q5. 新カリキュラム対応のチューター・教材はどう見つければいいですか?

公式のIB Store(store.ibo.org)で発売される最新のガイド・Specimen Papers・Teacher Support Materialが一次情報として最も正確です。チューターを選ぶ際は、「2025年試験以降の新シラバスに実際に対応した指導経験があるか」「新IA・新EEフォーマットでの添削経験があるか」を確認してください。IBTでは、IB卒業生のチューターがシラバス改訂を随時フォローし、新課程に合わせた個別指導プランを提供しています。

出典

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