結論から言うと、Group6(芸術)は「将来の進路」と「作品づくりに使いたい表現手段」から逆算して選ぶのが正解です。 そして意外と知られていないのが、Group6を取らずにGroup1〜4からもう1科目を追加する選択肢もあるということ。IB DPの柔軟性が一番出るのがこのGroup6なんです。

この記事では、IBO公式情報をもとに、Group6の全6科目(Dance/Film/Literature and Performance/Music/Theatre/Visual Arts)をSL/HL・評価方法・向いている生徒像まで徹底比較します。芸術系大学・美大志望の人はもちろん、「Group3-5で手堅く固めたい」派の人も、最後まで読めば自分にベストな選択が見えるはずです。


目次

  1. Group6(The Arts)とは?|IB DPにおける位置づけ
  2. Group6の6科目一覧|何が選べるの?
  3. 6科目の比較表|SL/HL・評価・向いている生徒
  4. Visual Arts|視覚芸術のすべてを探求する
  5. Music|演奏・作曲・探究を横断する音楽
  6. Theatre|「作る・演じる・考える」を統合する演劇
  7. Film|映像表現と批評の両輪
  8. Dance|身体表現と文化的探究
  9. Literature and Performance|文学×演劇のハイブリッド(SLのみ)
  10. Group6を取らない選択|Group1〜4から追加する柔軟性
  11. 失敗しない選び方|4つのチェックポイント
  12. FAQ
  13. 出典

Group6(The Arts)とは? | IB DPにおける位置づけ

IB Diploma Programme(DP)は、6つの教科グループから基本1科目ずつ、合計6科目を選択する仕組みです。そのうち3〜4科目をHL(Higher Level・240時間)、残りをSL(Standard Level・150時間)で履修します。

Group6はそのうち「The Arts(芸術)」に位置づけられるグループで、表現・創造・批評・文化理解を統合的に学ぶのが特徴です。他のグループが「知識を得て分析する」寄りなのに対して、Group6は**「自分で作品を生み出すプロセスそのもの」が学習の中心**になります。これはIB Learner Profileのうち「Creative」「Reflective」「Communicator」と強く結びつく領域です。

ここがポイント:Group6は選ばなくても構いません。 IB DPのルールでは、Group6の代わりにGroup1〜4からもう1科目追加することが認められています(詳細は後半で解説)。つまり「芸術をやりたい人の入口」としてGroup6があり、「理系・文系で固めたい人」には別ルートが用意されている、という設計です。


Group6の6科目一覧 | 何が選べるの?

IBOが公式に提供しているGroup6の科目は以下の6つです。

  • Dance(ダンス)|SL / HL
  • Film(映画)|SL / HL
  • Literature and Performance(文学と演劇)|SLのみ(Group1と6の両方を満たすインターディシプリナリー科目)
  • Music(音楽)|SL / HL
  • Theatre(演劇)|SL / HL
  • Visual Arts(視覚芸術)|SL / HL

Literature and Performanceだけが少し特殊で、SLのみの提供であり、かつGroup1(言語と文学)とGroup6(芸術)の両方を同時に満たすことができる学際的科目です。文学と舞台芸術をつなぐ設計で、学校での提供が限られることもあります。

なお、新カリキュラムへの移行時期は科目ごとに異なります。たとえばVisual Artsは新ガイド初回指導2025年9月・初回試験2027年で、現行の2017ガイドは2026年試験が最後になります。Music(2020年初回指導・2022年初回試験)、Theatre(2022年初回指導・2024年初回試験)、Film(第2版・2023年初回試験)など、近年各科目で改訂が続いています。受講前にIBOの「Curriculum updates」ページで最新版を必ず確認してください。


6科目の比較表 | SL/HL・評価・向いている生徒

科目SL/HL主な評価構成向いている生徒
Visual ArtsSL / HLComparative Study(比較研究)/Process Portfolio(制作過程記録)/Exhibition(作品展示)※2027年試験からCreate・Connect・Communicateの新構成絵画・彫刻・インスタレーション・写真など視覚表現全般で勝負したい人/美大・ファインアート志望
MusicSL / HL4つのAreas of Inquiryを軸に、Exploring Music in Context/Experimenting with Music/Presenting Music(SL)+The Contemporary Music Maker(HL)演奏・作曲・編曲・音楽制作(DTM含む)を統合的に学びたい人/音大・音楽学部志望
TheatreSL / HLProduction Proposal/Research Presentation/Collaborative Project+Solo Theatre Piece(HLのみ)の4コンポーネント演出・脚本・俳優・舞台美術のどれかに強い関心がある人/演劇・舞台芸術・映像学部志望
FilmSL / HLTextual Analysis(5分の映像分析エッセイ)/Comparative Study(10分動画エッセイ)/Film Portfolio/Collaborative Film Project(HLのみ)映像制作も映画批評も両方やりたい人/映画学部・メディア学部・脚本志望
DanceSL / HLComposition and Analysis/Performance/Dance Investigation(ダンス探究)身体表現と文化的文脈の両方を探究したい人/ダンス・振付・舞踊学専攻志望
Literature and PerformanceSLのみ書面試験2本(小説→ドラマ化の探究/詩の比較)+Transformative Performance(文学を演劇化)+Oral Presentation文学解釈と身体表現を同時にやりたい人/Group1とGroup6を1科目で兼ねたい人

※評価ウェイトや細則は各科目ガイドの改訂で変わります。出願年の最新Subject Guide/Subject Briefで必ず確認してください。


Visual Arts | 視覚芸術のすべてを探求する

「作る×調べる×つなげる」を1つのポートフォリオに統合する科目です。

絵画、彫刻、陶芸、インスタレーション、デジタルアート、写真、版画など、視覚芸術の表現手段はほぼ何でも選べます。自分の「アーティストとしての探究」を2年かけて深め、最終的にExhibition(作品展示)として成果を発表します。

現行カリキュラム(〜2026年試験)

  • Comparative Study:異なる文化圏のアート作品3点以上を比較分析する外部評価
  • Process Portfolio:制作の思考プロセス・実験・試行錯誤を記録
  • Exhibition:最終作品群を展示+作家ステートメント(内部評価)

新カリキュラム(2025年指導開始/2027年初回試験)

「Create(創る)・Connect(つなぐ)・Communicate(伝える)」の3領域構成にリニューアル。SLは「Connections Study」、HLは「Artist Project」を制作するという形でSL/HLの差別化が強化されます。IBOは「アートメイキング=探究」という哲学を前面に出す方針です。

向いている生徒

  • 美大・アート系学部志望
  • 自分の手で作品を作ることが好きで、言葉で説明するのも苦にならない人
  • 文化的文脈を調べて作品に活かすのが楽しいタイプ

Visual Arts HLでの6-7点戦略はこちらの記事で詳しく解説しています。


Music | 演奏・作曲・探究を横断する音楽

従来の「演奏 or 作曲 or 音楽学」の縦割りを解体し、全部横断する設計が2020年改訂の目玉です。

現行Music(初回指導2020年・初回試験2022年)は、生徒が「Researcher(探究者)」「Creator(作り手)」「Performer(演奏者)」の3つの役割を横断的に経験します。

4つのAreas of Inquiry(探究領域)

  1. Music for sociocultural and political expression(社会文化的・政治的表現のための音楽)
  2. Music for listening and performance(鑑賞と演奏のための音楽)
  3. Music for dramatic effect, movement and entertainment(演劇・ダンス・エンタメ効果のための音楽)
  4. Music technology in the electronic and digital age(電子・デジタル時代の音楽技術)

評価構成(概要)

  • Exploring Music in Context:多様な音楽文化を探究し、演奏・創作サンプルで応答
  • Experimenting with Music:異なる文脈の音楽を実験的に応用
  • Presenting Music:演奏・作曲・制作の最終プレゼン
  • The Contemporary Music Maker(HLのみ):現代音楽メーカーとしての総合プロジェクト

向いている生徒

  • 演奏スキルと作曲・DTMの両方をやりたい人
  • ワールドミュージック・民族音楽・電子音楽など多様な文脈に興味がある人
  • 音大志望でも、総合大学の音楽学・Sound Art系を目指す人にもフィット

Theatre | 「作る・演じる・考える」を統合する演劇

Theatreは「演劇を作る4つの役割(Creator / Designer / Director / Performer)」全部を経験する設計です。

2022年初回指導・2024年初回試験の新課程では、4つの役割と4つの評価タスクが一対一対応するシンプルな構造になりました。

評価コンポーネント(新課程)

  • Production Proposal(内部評価):既存戯曲を選び、自分の演出ビジョンを最大12ページ/4000語で提案。ビジュアル要素が重視される設計
  • Research Presentation(外部評価):世界演劇のリサーチを口頭プレゼン(録画)
  • Collaborative Project:生徒同士のコラボで新しい演劇作品を創作
  • Solo Theatre Piece(HLのみ):演劇理論家の研究をベースに単独上演

向いている生徒

  • 演出・脚本・俳優・舞台美術・照明のどれかに強い関心がある人
  • ワールドシアター(歌舞伎・京劇・コンメディア・能など)を比較研究したい人
  • 大学で演劇学・舞台芸術・映像を学びたい人

Film | 映像表現と批評の両輪

Filmは「撮る」と「読み解く」の両方を同じ重みで学ぶ、ユニークな構成です。

Film(第2版・初回試験2023年)は分析と制作のバランスが特徴です。

評価コンポーネント

  • Textual Analysis:公式リスト作品から5分の映像抜粋を選び、1750語のエッセイで分析
  • Comparative Study:異なる文化圏の2作品を比較する10分の動画エッセイ(ナレーション付き)
  • Film Portfolio:自分が担当した制作ロール(監督/脚本/撮影/編集/サウンドなど)を9ページのポートフォリオにまとめる
  • Collaborative Film Project(HLのみ):チームで制作する7分の完成映画

SL/HL配点の違い

  • SL:分析系(Textual Analysis+Comparative Study)が60%
  • HL:制作系(Film Portfolio+Collaborative Film)が60%

つまり「批評・研究寄り」ならSL、「映像制作にガッツリ時間をかけたい」ならHLが合う、という設計です。

向いている生徒

  • 映画が好きで、自分でも短編を撮ってみたい人
  • 映画学部・メディア学部・脚本/監督志望
  • 視覚と文章の両方で自分を表現したい人

Dance | 身体表現と文化的探究

Danceは「踊ること」だけではなく、「踊りを研究する」ことも同じくらい重要な科目です。

評価コンポーネント

  • Composition and Analysis:自作の振付作品+それを分析する書面レポート(SL 800語/HL 1000語)
  • Performance:複数の文化・スタイルのダンスを実演(オープンショーイング形式)
  • Dance Investigation:2つの異なる文化・伝統のダンスを比較研究(SL 1500語/HL 2500語)

HLは振付作品の「3つの学習領域の連関」まで踏み込んで論じる必要があり、より深い自己省察と分析が求められます。

向いている生徒

  • ダンス経験者で、技術だけでなく文化的・歴史的文脈まで探究したい人
  • 振付家・ダンス研究者・ダンスセラピー志望
  • 身体と知性を両立させたいタイプ

Literature and Performance | 文学×演劇のハイブリッド(SLのみ)

この科目だけはちょっと特殊です。Group1(言語と文学)とGroup6(芸術)の両方を同時に満たせる唯一の科目で、SLのみの提供です。

初回試験2013年から開講された比較的新しいインターディシプリナリー科目で、文学作品の「解釈」と「舞台化」を往復しながら学びます。学校によっては開講していないので、志望校のDP Coordinatorに確認してください。

コース構成

  • Part 1:文学テクストの精読(約50時間)
  • Part 2:文学の舞台化を通じた探究
  • Part 3:文学と演劇理論の融合

評価コンポーネント

  • Paper:小説のドラマ化を論じるエッセイ+詩の比較エッセイ
  • Written Coursework:上演した戯曲の批評的分析
  • Transformative Performance:文学作品を自分で演劇化した上演
  • Oral Presentation:口頭発表

向いている生徒

  • 文学と演劇のどちらも選びきれない人
  • Group1とGroup6を1科目でまとめたい人(Group3〜5を広く取りたい)
  • 文芸創作・演劇批評・脚本志望

Group6を取らない選択 | Group1〜4から追加する柔軟性

ここが意外と知られていないポイント。IB DPではGroup6を選ばず、代わりにGroup1〜4から追加1科目を取ることも認められています。

つまり、以下のどちらかのパターンで6科目を揃えればOKです。

パターンA:Group6から1科目

  • Group1(言語と文学)×1
  • Group2(言語習得)×1
  • Group3(個人と社会)×1
  • Group4(理科)×1
  • Group5(数学)×1
  • Group6(芸術)×1

パターンB:Group6を取らず、他グループから追加

  • Group1×1/Group2×1/Group3×1/Group4×1/Group5×1
  • Group1〜4のいずれかから追加で1科目

例:理系志望でPhysics HL+Chemistry HL+Biology HL(Group4から2科目)の「トリプルサイエンス」にしたい人や、社会科学志望でEconomics+History+Psychology(Group3から2科目)にしたい人は、Group6を取らない選択をよくします。

どう判断する?

  • 芸術活動が自分のアイデンティティの核にある → Group6を取る
  • 大学の専攻で要求される科目を優先したい/芸術以外で6枠を埋めたい → Group1〜4から追加

科目選択全体の戦略はIB科目選択ガイド2026で詳しく解説しています。


失敗しない選び方 | 4つのチェックポイント

1. 進学先の出願要件を先に見る

美大・音大・映画学部などはポートフォリオやオーディション+特定のGroup6科目HLを要求するケースがあります。志望校のAdmissions Requirementsを先に確認してから決めるのが鉄則。

2. 自分が「作りたい表現」を明確にする

6科目それぞれ、作品づくりの軸が違います。

  • 絵・立体・写真 → Visual Arts
  • 楽器・作曲・DTM → Music
  • 演出・演技・脚本 → Theatre
  • 映像・脚本 → Film
  • 身体・振付 → Dance
  • 文学解釈+舞台化 → Literature and Performance

3. コンポーネント構成が自分に合うか確認

たとえばFilmは「エッセイと動画制作の両立」、Visual Artsは「長期的なポートフォリオ運営」、Theatreは「グループワーク+個人プロジェクトの両輪」というように、2年間の走り方がかなり違います。苦手な形式だと負担が爆発するので要注意。

4. 学校で開講されているか確認

特にDanceとLiterature and Performanceは、開講している学校が限られます。志望先DP認定校のSubject Listを事前に確認してください。


FAQ

Q1. Group6は必ず取らないといけないの?

A. いいえ、取らなくてもOKです。 Group6の代わりにGroup1〜4から追加1科目を取れば、IB DPディプロマの条件(6科目履修)は満たせます。芸術系の進路を考えていない人は、理科や社会科をもう1科目取ることが多いです。

Q2. Group6科目はHLで取ると大学受験で不利?

A. 進路によります。 美大・音大・映画学部などは逆にHL必須のケースもあります。一方、総合大学の理系学部を狙うならGroup4(理科)をHLで2科目以上取るほうが評価されることが多いです。志望校の要求科目を先に確認してください。

Q3. Literature and Performanceを取ればGroup1を別で取らなくていいの?

A. はい、その通りです。 Literature and PerformanceはGroup1とGroup6の両方を満たす珍しい科目で、これを選ぶとその分Group3〜5を厚くできます。ただしSLのみ&開講校が限られるので、学校への事前確認が必須。

Q4. Visual Artsは絵が上手くないと無理?

A. 絵だけの科目ではありません。 写真・彫刻・インスタレーション・デジタルアート・コラージュなど表現手段は自由です。重視されるのは「探究の深さ」と「プロセスの質」なので、技巧だけで決まりません。むしろ「コンセプトを言語化する力」が重要。

Q5. IB DP Group6の評価は演奏や実演も見られるの?

A. 科目によります。 Music・Theatre・Dance・Film(制作系)は実演や制作物が評価対象です。ただし多くの場合、録画や録音を提出する形式で、ライブで試験官が見に来るわけではありません。Visual ArtsとLiterature and Performanceも実物の展示・上演+それに関する書面評価という構成になっています。


出典(公式・準公式)


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