結論から言うと、Group6(芸術)は「将来の進路」と「作品づくりに使いたい表現手段」から逆算して選ぶのが正解です。 そして意外と知られていないのが、Group6を取らずにGroup1〜4からもう1科目を追加する選択肢もあるということ。IB DPの柔軟性が一番出るのがこのGroup6なんです。
この記事では、IBO公式情報をもとに、Group6の全6科目(Dance/Film/Literature and Performance/Music/Theatre/Visual Arts)をSL/HL・評価方法・向いている生徒像まで徹底比較します。芸術系大学・美大志望の人はもちろん、「Group3-5で手堅く固めたい」派の人も、最後まで読めば自分にベストな選択が見えるはずです。
目次
- Group6(The Arts)とは?|IB DPにおける位置づけ
- Group6の6科目一覧|何が選べるの?
- 6科目の比較表|SL/HL・評価・向いている生徒
- Visual Arts|視覚芸術のすべてを探求する
- Music|演奏・作曲・探究を横断する音楽
- Theatre|「作る・演じる・考える」を統合する演劇
- Film|映像表現と批評の両輪
- Dance|身体表現と文化的探究
- Literature and Performance|文学×演劇のハイブリッド(SLのみ)
- Group6を取らない選択|Group1〜4から追加する柔軟性
- 失敗しない選び方|4つのチェックポイント
- FAQ
- 出典
Group6(The Arts)とは? | IB DPにおける位置づけ
IB Diploma Programme(DP)は、6つの教科グループから基本1科目ずつ、合計6科目を選択する仕組みです。そのうち3〜4科目をHL(Higher Level・240時間)、残りをSL(Standard Level・150時間)で履修します。
Group6はそのうち「The Arts(芸術)」に位置づけられるグループで、表現・創造・批評・文化理解を統合的に学ぶのが特徴です。他のグループが「知識を得て分析する」寄りなのに対して、Group6は**「自分で作品を生み出すプロセスそのもの」が学習の中心**になります。これはIB Learner Profileのうち「Creative」「Reflective」「Communicator」と強く結びつく領域です。
ここがポイント:Group6は選ばなくても構いません。 IB DPのルールでは、Group6の代わりにGroup1〜4からもう1科目追加することが認められています(詳細は後半で解説)。つまり「芸術をやりたい人の入口」としてGroup6があり、「理系・文系で固めたい人」には別ルートが用意されている、という設計です。
Group6の6科目一覧 | 何が選べるの?
IBOが公式に提供しているGroup6の科目は以下の6つです。
- Dance(ダンス)|SL / HL
- Film(映画)|SL / HL
- Literature and Performance(文学と演劇)|SLのみ(Group1と6の両方を満たすインターディシプリナリー科目)
- Music(音楽)|SL / HL
- Theatre(演劇)|SL / HL
- Visual Arts(視覚芸術)|SL / HL
Literature and Performanceだけが少し特殊で、SLのみの提供であり、かつGroup1(言語と文学)とGroup6(芸術)の両方を同時に満たすことができる学際的科目です。文学と舞台芸術をつなぐ設計で、学校での提供が限られることもあります。
なお、新カリキュラムへの移行時期は科目ごとに異なります。たとえばVisual Artsは新ガイド初回指導2025年9月・初回試験2027年で、現行の2017ガイドは2026年試験が最後になります。Music(2020年初回指導・2022年初回試験)、Theatre(2022年初回指導・2024年初回試験)、Film(第2版・2023年初回試験)など、近年各科目で改訂が続いています。受講前にIBOの「Curriculum updates」ページで最新版を必ず確認してください。
6科目の比較表 | SL/HL・評価・向いている生徒
| 科目 | SL/HL | 主な評価構成 | 向いている生徒 |
|---|---|---|---|
| Visual Arts | SL / HL | Comparative Study(比較研究)/Process Portfolio(制作過程記録)/Exhibition(作品展示)※2027年試験からCreate・Connect・Communicateの新構成 | 絵画・彫刻・インスタレーション・写真など視覚表現全般で勝負したい人/美大・ファインアート志望 |
| Music | SL / HL | 4つのAreas of Inquiryを軸に、Exploring Music in Context/Experimenting with Music/Presenting Music(SL)+The Contemporary Music Maker(HL) | 演奏・作曲・編曲・音楽制作(DTM含む)を統合的に学びたい人/音大・音楽学部志望 |
| Theatre | SL / HL | Production Proposal/Research Presentation/Collaborative Project+Solo Theatre Piece(HLのみ)の4コンポーネント | 演出・脚本・俳優・舞台美術のどれかに強い関心がある人/演劇・舞台芸術・映像学部志望 |
| Film | SL / HL | Textual Analysis(5分の映像分析エッセイ)/Comparative Study(10分動画エッセイ)/Film Portfolio/Collaborative Film Project(HLのみ) | 映像制作も映画批評も両方やりたい人/映画学部・メディア学部・脚本志望 |
| Dance | SL / HL | Composition and Analysis/Performance/Dance Investigation(ダンス探究) | 身体表現と文化的文脈の両方を探究したい人/ダンス・振付・舞踊学専攻志望 |
| Literature and Performance | SLのみ | 書面試験2本(小説→ドラマ化の探究/詩の比較)+Transformative Performance(文学を演劇化)+Oral Presentation | 文学解釈と身体表現を同時にやりたい人/Group1とGroup6を1科目で兼ねたい人 |
※評価ウェイトや細則は各科目ガイドの改訂で変わります。出願年の最新Subject Guide/Subject Briefで必ず確認してください。
Visual Arts | 視覚芸術のすべてを探求する
「作る×調べる×つなげる」を1つのポートフォリオに統合する科目です。
絵画、彫刻、陶芸、インスタレーション、デジタルアート、写真、版画など、視覚芸術の表現手段はほぼ何でも選べます。自分の「アーティストとしての探究」を2年かけて深め、最終的にExhibition(作品展示)として成果を発表します。
現行カリキュラム(〜2026年試験)
- Comparative Study:異なる文化圏のアート作品3点以上を比較分析する外部評価
- Process Portfolio:制作の思考プロセス・実験・試行錯誤を記録
- Exhibition:最終作品群を展示+作家ステートメント(内部評価)
新カリキュラム(2025年指導開始/2027年初回試験)
「Create(創る)・Connect(つなぐ)・Communicate(伝える)」の3領域構成にリニューアル。SLは「Connections Study」、HLは「Artist Project」を制作するという形でSL/HLの差別化が強化されます。IBOは「アートメイキング=探究」という哲学を前面に出す方針です。
向いている生徒
- 美大・アート系学部志望
- 自分の手で作品を作ることが好きで、言葉で説明するのも苦にならない人
- 文化的文脈を調べて作品に活かすのが楽しいタイプ
Visual Arts HLでの6-7点戦略はこちらの記事で詳しく解説しています。
Music | 演奏・作曲・探究を横断する音楽
従来の「演奏 or 作曲 or 音楽学」の縦割りを解体し、全部横断する設計が2020年改訂の目玉です。
現行Music(初回指導2020年・初回試験2022年)は、生徒が「Researcher(探究者)」「Creator(作り手)」「Performer(演奏者)」の3つの役割を横断的に経験します。
4つのAreas of Inquiry(探究領域)
- Music for sociocultural and political expression(社会文化的・政治的表現のための音楽)
- Music for listening and performance(鑑賞と演奏のための音楽)
- Music for dramatic effect, movement and entertainment(演劇・ダンス・エンタメ効果のための音楽)
- Music technology in the electronic and digital age(電子・デジタル時代の音楽技術)
評価構成(概要)
- Exploring Music in Context:多様な音楽文化を探究し、演奏・創作サンプルで応答
- Experimenting with Music:異なる文脈の音楽を実験的に応用
- Presenting Music:演奏・作曲・制作の最終プレゼン
- The Contemporary Music Maker(HLのみ):現代音楽メーカーとしての総合プロジェクト
向いている生徒
- 演奏スキルと作曲・DTMの両方をやりたい人
- ワールドミュージック・民族音楽・電子音楽など多様な文脈に興味がある人
- 音大志望でも、総合大学の音楽学・Sound Art系を目指す人にもフィット
Theatre | 「作る・演じる・考える」を統合する演劇
Theatreは「演劇を作る4つの役割(Creator / Designer / Director / Performer)」全部を経験する設計です。
2022年初回指導・2024年初回試験の新課程では、4つの役割と4つの評価タスクが一対一対応するシンプルな構造になりました。
評価コンポーネント(新課程)
- Production Proposal(内部評価):既存戯曲を選び、自分の演出ビジョンを最大12ページ/4000語で提案。ビジュアル要素が重視される設計
- Research Presentation(外部評価):世界演劇のリサーチを口頭プレゼン(録画)
- Collaborative Project:生徒同士のコラボで新しい演劇作品を創作
- Solo Theatre Piece(HLのみ):演劇理論家の研究をベースに単独上演
向いている生徒
- 演出・脚本・俳優・舞台美術・照明のどれかに強い関心がある人
- ワールドシアター(歌舞伎・京劇・コンメディア・能など)を比較研究したい人
- 大学で演劇学・舞台芸術・映像を学びたい人
Film | 映像表現と批評の両輪
Filmは「撮る」と「読み解く」の両方を同じ重みで学ぶ、ユニークな構成です。
Film(第2版・初回試験2023年)は分析と制作のバランスが特徴です。
評価コンポーネント
- Textual Analysis:公式リスト作品から5分の映像抜粋を選び、1750語のエッセイで分析
- Comparative Study:異なる文化圏の2作品を比較する10分の動画エッセイ(ナレーション付き)
- Film Portfolio:自分が担当した制作ロール(監督/脚本/撮影/編集/サウンドなど)を9ページのポートフォリオにまとめる
- Collaborative Film Project(HLのみ):チームで制作する7分の完成映画
SL/HL配点の違い
- SL:分析系(Textual Analysis+Comparative Study)が60%
- HL:制作系(Film Portfolio+Collaborative Film)が60%
つまり「批評・研究寄り」ならSL、「映像制作にガッツリ時間をかけたい」ならHLが合う、という設計です。
向いている生徒
- 映画が好きで、自分でも短編を撮ってみたい人
- 映画学部・メディア学部・脚本/監督志望
- 視覚と文章の両方で自分を表現したい人
Dance | 身体表現と文化的探究
Danceは「踊ること」だけではなく、「踊りを研究する」ことも同じくらい重要な科目です。
評価コンポーネント
- Composition and Analysis:自作の振付作品+それを分析する書面レポート(SL 800語/HL 1000語)
- Performance:複数の文化・スタイルのダンスを実演(オープンショーイング形式)
- Dance Investigation:2つの異なる文化・伝統のダンスを比較研究(SL 1500語/HL 2500語)
HLは振付作品の「3つの学習領域の連関」まで踏み込んで論じる必要があり、より深い自己省察と分析が求められます。
向いている生徒
- ダンス経験者で、技術だけでなく文化的・歴史的文脈まで探究したい人
- 振付家・ダンス研究者・ダンスセラピー志望
- 身体と知性を両立させたいタイプ
Literature and Performance | 文学×演劇のハイブリッド(SLのみ)
この科目だけはちょっと特殊です。Group1(言語と文学)とGroup6(芸術)の両方を同時に満たせる唯一の科目で、SLのみの提供です。
初回試験2013年から開講された比較的新しいインターディシプリナリー科目で、文学作品の「解釈」と「舞台化」を往復しながら学びます。学校によっては開講していないので、志望校のDP Coordinatorに確認してください。
コース構成
- Part 1:文学テクストの精読(約50時間)
- Part 2:文学の舞台化を通じた探究
- Part 3:文学と演劇理論の融合
評価コンポーネント
- Paper:小説のドラマ化を論じるエッセイ+詩の比較エッセイ
- Written Coursework:上演した戯曲の批評的分析
- Transformative Performance:文学作品を自分で演劇化した上演
- Oral Presentation:口頭発表
向いている生徒
- 文学と演劇のどちらも選びきれない人
- Group1とGroup6を1科目でまとめたい人(Group3〜5を広く取りたい)
- 文芸創作・演劇批評・脚本志望
Group6を取らない選択 | Group1〜4から追加する柔軟性
ここが意外と知られていないポイント。IB DPではGroup6を選ばず、代わりにGroup1〜4から追加1科目を取ることも認められています。
つまり、以下のどちらかのパターンで6科目を揃えればOKです。
パターンA:Group6から1科目
- Group1(言語と文学)×1
- Group2(言語習得)×1
- Group3(個人と社会)×1
- Group4(理科)×1
- Group5(数学)×1
- Group6(芸術)×1
パターンB:Group6を取らず、他グループから追加
- Group1×1/Group2×1/Group3×1/Group4×1/Group5×1
- Group1〜4のいずれかから追加で1科目
例:理系志望でPhysics HL+Chemistry HL+Biology HL(Group4から2科目)の「トリプルサイエンス」にしたい人や、社会科学志望でEconomics+History+Psychology(Group3から2科目)にしたい人は、Group6を取らない選択をよくします。
どう判断する?
- 芸術活動が自分のアイデンティティの核にある → Group6を取る
- 大学の専攻で要求される科目を優先したい/芸術以外で6枠を埋めたい → Group1〜4から追加
科目選択全体の戦略はIB科目選択ガイド2026で詳しく解説しています。
失敗しない選び方 | 4つのチェックポイント
1. 進学先の出願要件を先に見る
美大・音大・映画学部などはポートフォリオやオーディション+特定のGroup6科目HLを要求するケースがあります。志望校のAdmissions Requirementsを先に確認してから決めるのが鉄則。
2. 自分が「作りたい表現」を明確にする
6科目それぞれ、作品づくりの軸が違います。
- 絵・立体・写真 → Visual Arts
- 楽器・作曲・DTM → Music
- 演出・演技・脚本 → Theatre
- 映像・脚本 → Film
- 身体・振付 → Dance
- 文学解釈+舞台化 → Literature and Performance
3. コンポーネント構成が自分に合うか確認
たとえばFilmは「エッセイと動画制作の両立」、Visual Artsは「長期的なポートフォリオ運営」、Theatreは「グループワーク+個人プロジェクトの両輪」というように、2年間の走り方がかなり違います。苦手な形式だと負担が爆発するので要注意。
4. 学校で開講されているか確認
特にDanceとLiterature and Performanceは、開講している学校が限られます。志望先DP認定校のSubject Listを事前に確認してください。
FAQ
Q1. Group6は必ず取らないといけないの?
A. いいえ、取らなくてもOKです。 Group6の代わりにGroup1〜4から追加1科目を取れば、IB DPディプロマの条件(6科目履修)は満たせます。芸術系の進路を考えていない人は、理科や社会科をもう1科目取ることが多いです。
Q2. Group6科目はHLで取ると大学受験で不利?
A. 進路によります。 美大・音大・映画学部などは逆にHL必須のケースもあります。一方、総合大学の理系学部を狙うならGroup4(理科)をHLで2科目以上取るほうが評価されることが多いです。志望校の要求科目を先に確認してください。
Q3. Literature and Performanceを取ればGroup1を別で取らなくていいの?
A. はい、その通りです。 Literature and PerformanceはGroup1とGroup6の両方を満たす珍しい科目で、これを選ぶとその分Group3〜5を厚くできます。ただしSLのみ&開講校が限られるので、学校への事前確認が必須。
Q4. Visual Artsは絵が上手くないと無理?
A. 絵だけの科目ではありません。 写真・彫刻・インスタレーション・デジタルアート・コラージュなど表現手段は自由です。重視されるのは「探究の深さ」と「プロセスの質」なので、技巧だけで決まりません。むしろ「コンセプトを言語化する力」が重要。
Q5. IB DP Group6の評価は演奏や実演も見られるの?
A. 科目によります。 Music・Theatre・Dance・Film(制作系)は実演や制作物が評価対象です。ただし多くの場合、録画や録音を提出する形式で、ライブで試験官が見に来るわけではありません。Visual ArtsとLiterature and Performanceも実物の展示・上演+それに関する書面評価という構成になっています。
出典(公式・準公式)
- IBO公式|Study the arts (Diploma Programme curriculum)
- IBO公式|Study music
- IBO公式|Study film
- IBO公式|Study dance
- IBO公式|Study visual arts
- IBO公式|Literature and performance course
- IBO公式|Visual arts curriculum updates
- IBO公式|Theatre curriculum updates
- IBO公式|Read curriculum updates
- IBO公式 Subject Briefs(Music 2020/Theatre SL・HL/Literature and Performance ほか)
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